17個目 今も昔も変わらんと ページ17
『なら』
傘を後方に投げ、男のネクタイを掴みあげる。
『これで対等だ。文句はねぇな？』
「え」
男は目を見開く。
『面白い。雨に打たれてて、立ち上がる気力もないのにそんなこと言えるんだ』
面白いってのは最高の褒め言葉だと思う。だって何があってもその言葉で片付けられる。それに、何が起きるかもわからないんだから。
『私、この国の末の王女なんだよ。ねぇ、私に仕えてくれたりしない？』
「なっ」
今思うと、あの頃の私は信頼できる人が欲しかったのかもしれない。母親たちの仲の悪さに、兄弟に虐げられる苦しさ。気にはしてなかったけど、心の奥では、きっと。
だから
『何がほしい？何でもあげる。何がしたい？何でも叶えてあげるよ』
「・・見返りは？」
見返り。見返りかと私は考える。損得で動けるほどまだ精神が成長してなかった。
嘘をつけるほど器用でもなく
『うーん、私さぁ。面白いことが大好きなの。で、でね』
だけど人を見る目は確かで。
『異端な末の王女が拾ってきた人間が、出世して誰にも文句が言えないほど偉くなるなんてお話面白くない？』
男はぽかんと口を開け
「く、ふ、ふははははは！！あはははははは！」
帝王のような、少年のような爆音の笑い声を響かせる。雨音にも負けない強い音だ。
「面白い、か！ふ、ふふは、面白い」
男は笑いながらも膝をついて私の手の甲を取る。
「いいでしょう。俺が仕えるに値する人間だ。このグルッペン・フューラー、貴殿に忠誠を誓いましょう」
手の甲に唇を落とし、笑う。
『きざ、だね』
「そうか？」
『これからよろしく』
末永く。
gr「なにニヤニヤしてんだお前」
『失礼だな、減俸するぞ』
gr「呼吸をするように給料減らすのやめてください」
やっと起きたのか。ぼさぼさの髪を手ぐしで整えながら身体を起こす。
gr「あー・・・」
『はいおはよう起きて。』
gr「起きた」
低血圧だな、ぼーっとすんなしゃきっとしろ。
gr「・・懐かしい夢を、見てた」
『んー？』
そろそろ着替えようとクローゼットに手をかける。
gr「お前に拾われた夢」
『あら、同じこと考えてた』
何か通じ合ったんかな。やだロマンチック。
gr「本当に、生意気なガキだった」
『お？減俸かな』
gr「だがそれ以上に強く惹かれた」
『おだてても何も出ねぇよ』
珍しく素直なグルッペンは、着替え途中の私に近づき、あの時のように手の甲に印を落とす。
gr「これからもよろしく。おひいさま」
してやったりと笑う顔は幼くて。
『相変わらず気障だなぁ』
思わず笑いがこみ上げた。
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あまね(プロフ) - この作品大好きですううううううううう (10月1日 21時) (
レス) @page20 id: 2b125e9969 (このIDを非表示/違反報告)
ミイ(プロフ) - 毒舌で芯のある女の子大好きです。一目惚れしました。マジカッコイイ。天才。 (2022年2月18日 20時) (レス) @page20 id: e16e3e06be (このIDを非表示/違反報告)
ぴく(プロフ) - 今までになかったこのクセがある作品が大好きですです。作者様の気が向くまで私たちはいつまでも待っていますよ。 (2021年9月27日 17時) (レス) @page20 id: 8f6e3156ea (このIDを非表示/違反報告)
雨音 - 更新楽しみにしてます！ (2021年3月24日 13時) (レス) id: 13ab585311 (このIDを非表示/違反報告)
ぱずる(プロフ) - 主様の作品、私が思い描いていた通りのもので本当に楽しく読ませていただいております。無理せずに更新していただければ幸いです。これからの更新も楽しみにしております…!! (2021年3月18日 19時) (レス) id: d66a5d749d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：碧月
| 作成日時：2020年3月19日 22時
