16個目 思い出話に水をあげて ページ16
茶番ちゃんが来る前に目を覚ますと、腹立つくらい顔のいい人間がおる。
あのまま話し込んで寝たんだっけ。子供か。まぁたまに何故か五歳児になるから実質子供だわ。
『・・普通雇い主より先に起きるだろ』
すーすー寝息立てやがってこの野郎。鼻をつまめば嫌そうに顔をしかめて反対側を向く。
『・・・それにしても、長い付き合いよなぁ』
こいつを拾ってからもう何年経つよ。昔外壁にいた男が今は国王軍のトップに君臨するんだから凄い。
ふと、この前言われた言葉が頭に浮かぶ。
『侍らしてる、ねぇ・・』
よく言われる悪口のひとつだが、間違ってはいない。私のそばにおいてる14人は私が拾ってたり勧誘したりしてる奴等だから。
『お前と出会ったのが一番始めなのに、まだ覚えてるよ』
もう何年も前になるとある雨の日。ざーざー降りでテンションがばく上がりの私は城の外壁を石で削りながら歩いていた。
大きな傘にかわいい長靴。
外壁削ってた理由？なんとなく。多分削れる音が好きだった。気がする。いや知らん上にどうでもいいわ。
雨が本降りになりますますテンションが上がった私が駆けめぐっていると
『ん？』
人影を発見。近づけばそれは、金色の髪を有した男性だった。
『なにしてんの』
年上に敬語も使えない生意気野郎の私に気づいたのか、男はゆっくりと顔を上げこちらを見る。
「なに、してるかぁ。」
『寒くないん？』
「全く」
強い人だな、と思った気がする。
『お腹空いてない？』
「いいや」
会話が途切れたので、私の傘を彼にかけようと手を伸ばす。しかし彼はそれを拒否した。
『？』
「いらない」
『風邪引くよ』
「いい、俺に関わるな」
関わるなと言われても。立ち上がる気力もない男を見捨てられるほどできた人間ではない
『でも』
「同情が欲しくてここにいるわけじゃない」
同情という言葉。何となく知ってたが、良いイメージがない。しかし今はそんなことを気にしてる場合でも無かろう。納得言ってない私に、男は続けた。
「同情というのは自由の放棄に等しい。お前から受け取ったそれを、俺は何かしらの形で返さなければならないだろう」
『はぁ・・』
なにやら面倒くさいことを言ってる。要するにこの男は、死ぬ以上に大切な信念というものを持ってるということ。
面白い。
無意識にその文字が頭に浮かび、私の口角が上がった。
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あまね(プロフ) - この作品大好きですううううううううう (10月1日 21時) (
レス) @page20 id: 2b125e9969 (このIDを非表示/違反報告)
ミイ(プロフ) - 毒舌で芯のある女の子大好きです。一目惚れしました。マジカッコイイ。天才。 (2022年2月18日 20時) (レス) @page20 id: e16e3e06be (このIDを非表示/違反報告)
ぴく(プロフ) - 今までになかったこのクセがある作品が大好きですです。作者様の気が向くまで私たちはいつまでも待っていますよ。 (2021年9月27日 17時) (レス) @page20 id: 8f6e3156ea (このIDを非表示/違反報告)
雨音 - 更新楽しみにしてます！ (2021年3月24日 13時) (レス) id: 13ab585311 (このIDを非表示/違反報告)
ぱずる(プロフ) - 主様の作品、私が思い描いていた通りのもので本当に楽しく読ませていただいております。無理せずに更新していただければ幸いです。これからの更新も楽しみにしております…!! (2021年3月18日 19時) (レス) id: d66a5d749d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：碧月
| 作成日時：2020年3月19日 22時
