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ハッピーバースデー! ページ20



突然のことに反射で悲鳴を上げた。立っているだけで心拍数が計れるくらい、ドッドッと脈拍が大きくなる。目の前の彼は、私がこんなに振り回されていることに気づいているのだろうか。否、気づいていない為に何でもないような顔が出来るのだろうが。

彼は綺麗な銀髪を横へ揺らして首を傾げた。その瞳で見つめられると、どうしてか疚しい気持ちになる。目を逸らして一歩後退りをした。


「何をボーッとしていたんだ?これがセベクなら怒鳴られていたぞ。」

『い、いや……その……』


やばい。その一言に尽きる。いざ目の前に出てこられると緊張して何を話したら良いのかわからない。自然と手に湿り気を覚えた。ドクンドクンと脈打つ胸ばかり前へ前へ逸り、言葉が出てこない。しかし、沈黙を破るべく先に口を開いたのはまたしても彼だった。


「伸ばしているんだな、髪。」

『え、』


彼が突飛なことを言うのは今に始まった事ではない。しかし、ブランクが空いていた為対応に遅れてしまった。情けない。

急に自分の話題になり、混乱していた。実際、髪を短くしたのは入学して初めてで、長い方がやっぱり楽だと思ったから、惰性で伸ばしているだけだ。そこに深い意味はない。『そうかな?』なんてよくわからない返事を返すと、彼は鼻でフッと笑った。


「似合ってると思うぞ。」


私が髪を伸ばしているだけでそんなに幸せそうな顔をされる意味がわからない。彼は幸せを噛みしめるようにはにかんだ。まるで愛しいものを慈しむような目で、私を見た。


『あ、りがと……』


嬉しい、なんて柄じゃないけど。どこか面映ゆい感覚になった。そんな真剣に褒められると擽ったい。視線を下に下に逸らした。


「それより、ディアソムニア寮になんの用だ?」


セベクならまだ学校に残っていると思うが。そう言って当たり前かのように私の隣へ来たシルバー。彼がいないなら幸いだ。今は会いたくない。私はインタビュー書類とカメラを見せて言った。


『が、学園長に頼まれて……』

「インタビューなら、オンボロ寮の監督生が来たぞ?」

『は?』


すれ違いか?なんて問う彼の声は、私の耳には届かなかった。そりゃ監督生が他人に仕事を押し付けるような真似しないとはわかってたけど、まさか騙くらかしてまで私をここまで誘導するなんて、思っても見なかった。彼の策略にまんまと嵌ってしまったのだ。
愚かしい。あんな普通の子に騙されるなんて、私も落ちたものだ。頭を抱えて溜め息を吐いた。

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作者名: | 作者ホームページ:https://peing.net/ja/_sora_fleur?p=auto&utm_source=twitter&utm_medium=ti...  
作成日時:2020年10月2日 21時

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