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壱ノ章ー1話 ページ2

明日最愛の家族が結婚する

「ただいま」

開けられた戸に反応し玄関へ

『おかえり』

サラリとした髪に白い肌
眠そうな目で優しく笑う女につられ笑う

『雨降ってたの』

高そうでもない普通の何度も着まわしたような丁字染(ちょうじぞめ)色の菊菱模様が細かく散りばめられた着物は薄っすらと湿っていた

「通り雨よ。降られちゃったの」

微笑みながら湿った着物を軽く拭く

「でも小雨だったしすぐやむでしょう」

すると雨粒は大きな音を立て戸を叩きだす

『………』

段々とガラスから見える景色は黒ずんでゆく

『当分止みそうにないよ。今日泊まってけば』

「ご飯作ったら止むわよ」

手には根菜などが入った袋

「お腹空いたでしょう。今つくるわね」

下駄を脱ぎ廊下を歩く女

『いいよ、別に』

通り過ぎるとあとを追うように後ろへ

「ま、可愛くない事言うんだから」

『もう10歳だよ』

そう言うと女はため息まじりに息を吐く
きっとまだまだ子供だと言いたいのだろう

「根菜のお味噌汁にお魚にご飯でいいかしら?」

白くところどころ汚れた割烹着を着ながら台所へ歩いてゆく女

『昼の残りの煮っころがしもつけてよ』

「煮っころがしあるの?」

鍋を開けると程よく茶色が染み込んだ里芋

「あら、美味しそう」

微笑む女

「自分で作ったの?」

その問いに得意げに頷く

『昨日母さんに教えてもらってね』

煮っころがしだけではない
料理も裁縫も洗濯も全部一人でできる様にならくてはならない

「A、好きだもんね」

しっかりしなくては

『姉さんも好きでしょ』

だって七つ違いの面倒みのいい姉が実家を出るから

「あの人も好きよ」

姉が選んだ男は同じくらい平凡で平和そうに笑う人だった

『初耳』

あの男は嫌いじゃない

『少し持って帰る?』

男の隣で笑う姉を見るのが好きだ

「いいの?」

姉は最愛の人と結婚する

『最後に姉さんと過ごさせてくれたから、ありがとうって』

そう言うと姉は少し瞳を潤ませて笑う

『口に合うか分からないけどね』

明日最愛の人たちは結婚するはずだった

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作者名:( 'ω') | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2019年7月14日 11時

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