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この日は夏も近くスーツとシャツがやけに鬱陶しかったのを覚えている
仕事帰り電車に揺られ日差しに肌を焼かれながら帰宅
疲れた体にムチをうち風呂へ
そしてまたすぐ出社という地獄から洗って干していたスーツに身を包み横たわった
頬に当たる風に意識を取り戻した私はスマホでアラームをセットすることを忘れており焦りで目を開ける
『……は?』
もう一度言おう
この日は夏も近く暑さで肌に触れる布が鬱陶しく感じたはずだ
なのに今自分が見ている景色は雪原
白いペンキをひっくり返したような
『さむっ…!』
冷たさで思考が停止する
体中のあちこちが痛みをおびた
このままでいたら確実に死んでしまう
身を小さくしながら助けを求めるため鞄を探す
中には連絡手段であるスマートフォンが入っている
しかし
『ない…!?』
まるで自分以外が雪に溶けてしまったように
靴は履いている靴下もしっかり
訳がわからなかった
混乱する頭とざわつく心を必死になだめ別の方法を考える
積もっていても雪は落ちてこないし風も穏やか
日も高いし冬にしては暖かい気候なのだろう
そう思うと少しだけ気分が楽になった
しかしいつ降り出し天候が荒れるかわからない
人を探そう
どっちに行けばいいかわからないまま歩き出す
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