Cocktail poison (ページ6)

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2杯目:コロネーション(3) ページ6

「ソル、今日のカクテルなのだけど……」
「あ、お決まりになりましたか？」
「ええ。あなたのオススメが飲みたいわ」

　おすすめ、ですか。とソルは少し困ったように顎に手を当てて、彼の背後にある棚の瓶たちを眺める。数秒すると決まったのか、シェリーとドライ・ヴェルモットの瓶を取り出す。その隣にオレンジ・ビター、リキュールと並べ、ミキシンググラスが置かれる。

　はじめに、大きめの氷と水がミキシンググラスに入れられる。バー・スプーンがグラスの内側に沿って回されるのに合わせて、水の中で氷がクルクルと踊って削られた角を落として洗われていく。
　続いて、手早く捨てられた水の代わりにメジャー・カップで計量された材料たちがミキシンググラスに注がれていく。
　それをバー・スプーンでくるくるとかき混ぜていく。透き通った黄金色がミキシンググラスの中で揺蕩う。ストレーナーは使わず、慣れたようにバースプーンで氷を抑えながらグラスに注ぎ入れる。

　相変わらずの手早く、そして美しい動作に見惚れていると、そっとグラスが差し入れられる。

「…これは？」
「コロネーション・カクテルでございます。その中でも、私が知っている限り最も古いレシピを使用してみました」

　コロネーション、というらしいカクテルは黄金をそのグラスの中に輝かせて佇んでいた。いつものように、そっと口の中にその黄金を注ぎ入れる。少しピリリと残るアルコールに、気分が上がる。

「相変わらず、貴方の入れるカクテルは美味しいわね」
「お褒めいただき光栄です。ですが、まだまだ修行中の身ですので…」

　嬉しそうに笑いながら謙遜を重ねるソルに、少し笑ってコロネーションを喉に通していく。そうして、十数口で終わってしまうようなカクテルを少しずつ味わっていると、ソルが「カクテル言葉、というものをご存知ですか？」と聞いてきた。
　カクテル言葉、聞いたことのないものだが、花言葉などのような類いであろうかと考える。正直に「知らないわ。花言葉とかに近いものなのかしら？」と聞くと頷かれる。

「実は、コロネーションに私の思いを少しだけ乗せてお渡ししたのですが…」
「…そうだったの。それで、私はコロネーションのカクテル言葉を教えてもらってもいいのかしら？」

「…コロネーションのカクテル言葉は、『あなたを知りたい』です」