Cocktail poison (ページ16)

今日:5 hit、昨日:0 hit、合計:1,335 hit

4杯目:アキダクト(4) ページ16

再び彼との距離を詰めようとする私の唇にそっと指を重ねた彼は、自分の力で起き上がって私と向かい合う。一夜限りがいやなのだと言った彼の言葉に対して、私の思考が生み出した答えは「恋人になる」こと。さらりと告白された彼は、びっくりしたような顔を隠すことなく晒した。

　と思えば、話、聞いてくださいよと言って私から少しだけ離れて座り直す。ここまでされて、強引に進めても楽しくないと判断した私は、彼の話を聞く体制に入る。

「……もし！ほ、本当に、それが貴女の気持ちであったとしても！ ……俺、その、返事は……貴女のことをもっと知ってから、が、いいです」
「私のことを、知る？」

　すっかり真面目な顔になって話してきたのは、ずいぶんとかわいいことで、思わずびっくりしてしまった。酒に溺れてとち狂ったままの思考が、少しロマンチストなところも可愛らしくて好きだ、なんて言葉を紡ぎ出している。私のことを教えたら、彼は私と付き合ってくれるのだろうか。ましてや、一晩を明かしてくれると？

　なんでもいい。私だって、君のことをもっと知りたい。きっとその全てが愛しいから。

「いいわよ。じゃあそうね…」

　時の流れに身を任せたままの私は、酔いが覚めない状態のまま、本来ならば言ってはいけない言葉を勝手に滑らせてしまった。……のだが、後になって気づいたところで後の祭り。いや、酒の入ったこの状態を覚えていなければもうどうしようもないのだが。

「私、とある国のスパイなのよ」