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電光掲示板によると、3番ホームに、彼岸町行きの電車が到着するのは6時4分らしい。オレンジ色の文字で確かにそう表示されている。

電車の到着予定時刻は、まだ先だというのに、空気を割く太い汽笛の音が駅に響く。目の前を横切る長い快速列車だった。冷たい風が俺の短い髪を揺らすと共に痛々しいしいブレーキ音が響く。それもだんだんと小さくなり、遂にブレーキ音は消えた。扉が大きく息を吐くようにゆっくりと開く。直後、忙しげに飛び出す人の群れ。それとは対称的に、ここにいた約半分がそれに吸い込まれるように車両へ足を運んだ。

快速列車は、ここ月下から4駅程飛ばした空木駅(うつぎえき)へ向かう。そこで終わり。そう、快速列車は次で終点なのだ。だと言うのに、三番ホームに居たほとんどの人はそいつに乗り込んだ。ここほどでは、ないがそれなりに栄えた空木はきっと住むには持ってこい。故に、多くの人が行き来するのであろう。

空木を初めとした住宅地や団地の集まる地域は、利用者の殆どを会社へ向かう社会人や学生が占めると言う。多くの人が利用する通勤、帰宅ラッシュ時には快速列車が何本か通る。利用者の多い時間帯のみの快速列車。スーパーにコンビニ、ファストフード店や娯楽施設だってある。

彼岸町を含む田舎町は、スーパーやコンビニはあるが、娯楽施設もファストフード店もない。公共交通機関も2時間に1本。1時間おきに行きと帰りを走る電車だけ。

それでも俺の家は彼岸町では、まだマシの方。もっと奥へ行けば、家と田んぼと畑。この3つしかない集落もある。スーパーまで同じ町でも車で15分。歩くと約2時間かかる。そう考えると町では過ごしやすい位置なのだろう。比較的駅も近い。自転車で20分の距離だ。

俺だって昔は何も無いのが『普通』だと思っていた。そもそも、何も無いということ自体分かっておらず、この状況が『普通』で、何も無いという意識がなかった。たまにの外出で都心部へ出かける機会はあったものの、羨望的な感情はないに等しかった。

いつの日からかその感情は大きくなり、高校は、月下の中でも規模の大きい学校を選んだ。休日をここで過ごすことも少なくない。静かな町で過ごしてきた俺は、とにかく刺激が欲しかった。今日だってそうだ。

遅くまで遊んで馬鹿やって、無駄に金を使い、ゲラゲラ笑う。夜になって1人、ひっそりとした彼岸町に家路を辿る。そんな毎日。

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設定キーワード:恋愛 , オリジナル ,   
作品ジャンル:純文学, オリジナル作品
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助@でんこみたに(プロフ) - 赤菊 藍さん» ありがとうございます!頑張ります! (11月16日 16時) (レス) id: e967de5434 (このIDを非表示/違反報告)
赤菊 藍(プロフ) - このような作品はとても私好みでワクワクします!これからも頑張って下さいね。 (11月15日 15時) (レス) id: 729a63d6a3 (このIDを非表示/違反報告)
レンスイ(プロフ) - こちらの作品感想書かせていただきました! ご把握よろしくお願いします! (11月8日 11時) (レス) id: a25c9bfc08 (このIDを非表示/違反報告)
レンスイ(プロフ) - 情景描写が多く、厚みのある印象を受けました!駅の描写も細かく、語彙力があって圧倒されます! (11月8日 10時) (レス) id: a25c9bfc08 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - Noraさん» ありがとうございます。中学のクラスメイトがこんなでした。がんばります。 (9月20日 20時) (レス) id: 82ea27b76b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作者ホームページ:http:  
作成日時:2018年9月15日 21時

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