【僕のヒーローアカデミア】命懸け少年 Part4 (ページ13)

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でもそれはゴミなんかじゃなくページ13

治｢…何の事だかわからないな。｣

ト｢おいトガちゃん！マジで言ってるのか！｣

渡｢えぇ仁くん、私がお友達を間違えるはずがありません。この子は、紛れもなく、廻輪ちゃんです。｣

彼女は断言した。いつもの満面の笑みは消えていた。
大きな目を邪悪に歪ませて睨みつけていた。

渡｢返してください。｣

極道の男とセーラー服の少女が、秀麗な美少年を奪い合う様。一部の人間が見たら惹かれる絵面だが、この場にそんな事を考える人物などいない。

治｢ほぉ…怒っているのか。仮にそうだったら何だ、今すぐ帰って死柄木に報告するか。俺達と奔王の駒の奪い合いでもするか。｣

渡｢返して！｣

叫び声に、いかに少女が本心をぶつけてきているかが伝わって来た。まともに動かない脳内をぐるぐると巡る。ひみこちゃん、そんな、そんな顔をしないでくれ。駄目なんだ。僕は、もう。

治｢はぁ…おい。｣

揺すられて呼ばれる。ゆっくり顔を向けると、面を外される。

晒される素顔。

渡/ト｢…！｣

急に息が吸い込みやすくなって、寧ろ苦しかった。

廻様は僕を見下ろす。今日も冷たい目だ。

抱かれる力がきゅっと強くなる。
嗚呼、僕だけを触れる人よ。貴方は何を。

治｢……廻輪。｣

小さく、僕の名を呼んだ。いつもみたいに。

救けを呼ぶみたいに。

触れて欲しいの？小さい子に向けるみたいな目を僕はしているのだろう。

僕の腕は勝手に動いていた。

その喪った手は紛れもなく、廻様の頬を撫ぜた。

その行動は、紛れもなく愛だった。

男は気持ち良さそうに目を細めた。いや、笑ったのかもしれない。目の前の二人に見せつけるように。少年がこうする事をわかっていたんだ。

貴｢…かい、さま。｣

渡我と分倍河原の全身には一瞬で鳥肌が立った。
彼等には信じられなかった光景。現実。そして、耳に残り続ける、あまりに美しいその声が理由として。

治｢………これが、答えだ。｣

やっぱり、この人は酷い。

勝ち誇った笑みを浮かべ、僕を抱き直した。
埋め込まれた首輪が脈を打った。

渡｢…廻輪、ちゃ…｣

カランカランとナイフを落とす、僕の友達。

貴｢…ごめん、な…｣

こんな言葉に意味が無い事は知っていた。

でも僕にはもう帰ることなんてできないから。

愛しています。弔さん。
だから、僕を、捨ててください。

治｢さっさと行け。｣

立ち尽くす気配は遠ざかっていく。

治｢…捨てたのはお前だからな。｣

貴｢…｣

そんな事、わかりきっている。