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今回の件はどう考えても私が悪いのは明白だ。しかし、久しぶりの再会をお小言で始まりたくはなかった……それはきっとアヤックスも同じだと思う。
アヤックスが私に弱いのは分かっている。それはお互い様だ。私はすこししょんぼりしながらアヤックスを見る。すると、彼は小さく唸ったあと、私を見つめてからため息をついた。


「……今回は見逃してあげるよ。ただし、次はない。次来る時は、必ず俺に連絡を寄越すこと、いいね?」

「うん、わかった! ありがとうアヤックス」


私は自然と笑顔になるのが分かった。本人から直接、また会いに来てもいいと許可が出たのだ。喜ばないわけが無い。
それに、今回多少の危険を覚悟してまでアヤックスに会いに来たのは、純粋に会いたかったからだけではない。彼にその気があるのか、予定があるのか、相手がいるのかは分からないが……私はアヤックスに、気持ちを伝えるために来た。
何年も顔を見れなかった愛しい人。これ以上会えないくらいなら、思いごと砕けてしまった方がマシだというもの。


「ここはアヤックスの部屋? 綺麗だね。掃除ちゃんとしてるんだ」

「当たり前だろ。Aは整理整頓が行き届いていない部屋で過ごしたいと思うのかい?」

「……それもそうだね。アヤックスはいつも正しいことを言う。叶わないなぁ」


くるり、と部屋を見回しながら私は感想を述べる。彼の返答に私がくすりと小さく笑うと、彼も口元に笑みを浮かべながら、そうだろと楽しげに言う。こんなにも緊張感がないアヤックスを見ているのが、世界で私だけなら良いのに。
そう思うと、自然と彼に手が伸びていた。ぎゅっと服を握ると、アヤックスは不思議そうな表情で首を傾げた。


「どうしたんだい、A」


この仕草さえも愛おしい。こんなにも心臓が早く脈打つことなどあるのだろうか。心做しか顔に熱が集まっているような。
……あぁ、叶わないな。たった一つの仕草と言葉で、こんなにも私を狂わせるなんて。あなた一人のためにここまで来た私の覚悟なんて、知らないんだろうな。


「……好き」

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設定タグ:原神 , 短編集 , 恋愛   
作品ジャンル:恋愛
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作者名:ハル@雪割桜 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2022年2月3日 1時

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