番外編7 〜波乱の披露宴〜 ページ41
『……!!これは、陛下。こちらからのご挨拶で恐縮ですが、ご出席頂き感謝致します』
私たちは所謂上手に座っているわけだが、
今日は私たちの結婚式だ。堅苦しくなくとも良いと言われたわけだし、いいだろう。
ちょっとムッとしたし。
「うむ、良い。顔をあげよ」
『はい』
「見れば見るほど美しいのう、そなた、あの噂の娘だったのだろう?いやはや、斯様な可憐な女子のことだったとはな。知らなんだ」
『……』
…その事は、皆暗黙の了解で黙っていた。
フエゴレオンさんのお母様が人を選んでくれたから、喋る人はいなかった。
ついに、地雷を踏み抜く人が来てしまったか。
今更、やめてほしい。
私は、ただ今日のためにやってきたのに。
「……新郎である私の前で、挨拶もせず、ここまで口説くとはな」
『……っ、フエゴレオンさん…』
隣で呟くように、小さく、あくまで陛下には聞こえないように囁かれたが、今の声は新郎であるフエゴレオンさんだ。
「陛下」
「そなたが新郎だったな、ふむ。おめでとう」
「有り難きお言葉、痛み入ります。
折角の目出度き日です。私も後ほど談笑の場を設けたいと思っております。
陛下も、お越し頂けますか」
それは暗に今は邪魔だとの意だったけれど、
フエゴレオンさんからは薄らと炎が出ている。
それに気圧されて陛下は引き下がってくれた。
「……そ、そうか。では余は向こうにゆくぞ。あまり待たせんようにな」
「はい」
陛下が過ぎればこの場は落ち着く。
あの不躾な目線は気持ち悪いものだったために、安堵する。
「俄(にわか)には信じられんな、人の嫁をあのような目で見るなど…」
『王も気が抜けてしまっていたんでしょう。お目出度い場ですし…』
「全く……。Aは大丈夫だったか?」
『はい、フエゴレオンさんが隣にいて助けて下さいましたから』
何故ここに王がいるのかは分からないが、
目立ちたがり屋なのが今の国王陛下だ。
誰かから聞いて、突然来たという可能性もある。お祝い事となれば国王だし、誰かが止めることもないだろう。
それにしても、フエゴレオンさんが会話を切ってくれて良かった。
私がずっと話し続けていたらこの場も気まずい雰囲気となっただろう。
「私は当然のことをしたまでだ。Aの夫なのだからな」
ふわり、優しい眼差しを向けられて、私の頬に朱がさす。
ラッキーカラー
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妖狐の巴衛(プロフ) - マルメロさん» わかりました。ありがとうございます! (2018年3月25日 15時) (レス) id: 2ff3e29f1d (このIDを非表示/違反報告)
マルメロ(プロフ) - 妖狐の巴衛さん» お早い返事、ありがとうございます。そちら“にわか”と読みます。俄(にわか)…物事の急に起こるさま。という意味です。ここでは突然で信じられない。といった意味で使っております。 (2018年3月25日 13時) (レス) id: dcb3f35ff0 (このIDを非表示/違反報告)
マルメロ(プロフ) - 妖狐の巴衛さん» (続けます)がありまして、披露宴では夢主とフエゴレオンさんは隣に座っている+新婦を嫌らしい目で見られて不快な気持ちになる+今の声はフエゴレオンさんだ。これらからフエゴレオンさんと表したものなのですが、分かりづらいものになっていたようならば訂正致します。 (2018年3月25日 13時) (レス) id: dcb3f35ff0 (このIDを非表示/違反報告)
妖狐の巴衛(プロフ) - そうなんですね。ところで、「俄」なんとよむんですか? (2018年3月25日 13時) (レス) id: 2ff3e29f1d (このIDを非表示/違反報告)
マルメロ(プロフ) - 妖狐の巴衛さん» コメントありがとうございます。混乱させてしまったようで申し訳ありません。そちらのセリフはフエゴレオンさんのセリフとなっております。その直後に“隣で呟くように、小さく、あくまで陛下には聞こえないように囁かれたが、今の声はフエゴレオンさんだ。”という言葉 (2018年3月25日 13時) (レス) id: dcb3f35ff0 (このIDを非表示/違反報告)
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