【94】・酔わせる為に。 ページ28
『Noside』
未だ宴は続き、Aは時折エンマ大王が食べさせてくれる料理を堪能していた。
エンマ「美味いか?」
A「はい。でも、お酒が欲しくなってきますね」
独り言のように言った彼女に対し、エンマ大王は少し驚いた顔を見せる。
エンマ「珍しいな、そんな事をAが言うなんて。前に酒で酔っ払った以来、全然飲まなくなったろ?」
A「まだ覚えてたんですか....」
エンマ「逆に忘れる方が難しいっつの。あんな感じでお前に求められたの初めてだった」
それは、約一年前の事。
二人きりで月見酒をして、ゆっくりと過ごしていたがいつもより酒を飲み過ぎたAは酔っ払ってしまい大胆な方法でエンマ大王を誘惑した。
盛り上がった二人は朝になるまで愛し合って、翌朝は腰痛と二日酔いで仕事が出来なかったそうな。
エンマ「また、あんな風に誘ってくれないのか?」
A「嫌です!」
断られるエンマ大王だが、ふと何かを企んだ顔をして近くに居た仲居に酒を持ってこさせるように言っていた。
エンマ「酒、欲しいんだろ?」
A「明らかに何か企んでますよね....」
エンマ「折角、頼んでやったのに怪しむなよ」
話を逸らしては、女性陣達が見たら一発で落ちそうな笑みを浮かべるエンマ大王。
けれど、彼女であるAに通用する筈も無い。
A「...この悪魔。変態大王」
背を向けたAを軽く抱き締めた後、悪魔そのもののような顔のエンマ大王は夜を楽しみに待っていた。
数分もしない内に酒が運ばれ、彼女の前に置かれる。
林檎味のリキュールなようで、度数は低めに作られたものだという。
エンマ「これなら酔わないんじゃないのか」
辛口の日本酒は飲めない事を知っているから、度数が低いやつを選び頼んだ。
A「あ、ありがとうございます....」
甘い林檎のリキュールを一口飲むAは、彼を見直し礼を言う。
A「てっきり、本気で私を酔わせるのかと...」
エンマ「本気で酔わせたら、翌日お前に何言われるか分からねぇからな」
邪な考えはあったとしても、彼女に怒られるのが嫌なエンマ大王だった。
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その後、時間も忘れて誰もが賑やかな宴会を楽しむ中リキュールを飲んでたAが先程からボーッとしている。
エンマ「A?どうした?」
“まさか”とは思いつつ、彼女の顔を心配そうに覗いて目を合わせる。
A「ん...エンマ〜....」
甘えた声で名を呼ぶ彼女は、とても分かりやすい程に酔っ払っていた。
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作者名:カナミ | 作成日時:2024年2月7日 19時