七十七話 すれ違い ページ30
観音坂独歩side
最悪な事に、Aさんに渡すつもりだった御礼の品は会社においてきてしまったので、新宿の町でAさんの欲しいものを買わせていちただくことになった。
俺はなんて使えないやつなんだ…。と落ち込むが、「気にしないでください。元々、御礼の品なんて図々しくもらう気ありませんから…(汗)」とAさんは天使のように微笑んだ。
「わぁ…素敵なお洋服が沢山ある…。」
Aさんはどうやら服に疎いらしく、新宿で割りと服の揃っている店を紹介すると、
キラキラと目を輝かせていた。
独歩「…一二三から、教えてもらいました。この店を。俺は、よくわからないので…」
「一二三さんが。」
はぁー、と彼女はうなずく。そして二言目には、「一二三さんは大丈夫ですか?」と発した。
独歩「一二三は病院で安静にしてます…。それに、Aさんだって大丈夫ですか?病院…行かれてないですよね?」
そう言うと、彼女はしばらく考えてから、「私は怪我が軽かったので」と笑顔を向けた。
「それにしても、本当に素敵なお洋服…
」
「飴村さんに薦められた服みたいだなぁ。」
服を見ながら彼女は感心したように言った。
独歩「飴村……、渋谷のですか?」
「はい、そうです…!前に飴村さんが私をコーディネートしてくださったんです。」
「とてもセンスが良くて、パパパッと服の組み合わせとか、すぐに出来るんですよ。」
急に何かスイッチが入ったように、Aさんは飴村乱数の話をつらつらと現した。
Aさんは、飴村さんと仲が良いらしい。
「素敵ですよ、飴村さんは。胸はって、好きなことを好きって素直に言えて、キラキラしてて……私は何回も助けられちゃってますし」
キラキラと顔を輝かせながら話すその光景は、社畜に疲れた俺にとって…なんか甘酸っぱいものだった。
Aさんってこんな表情するんだ。
ふと、火事のあの時を思い出す。
金髪から覗いた、緑色の鋭い眼光。
あの人格が本当にこうも変わるのか?と内心思う。
だが、Aさんにとってそれは触れられたくないのか、一度もその話を持ち出さない。
なら、俺も余計な詮索をやめておこう。
「前まで連絡がきていたのに、今はきてないんですよ?忙しいんですかね、飴村さん。」
独歩「どうなんですかね…」
どう答えたら良いのか解らず、俺は苦笑いをした。
−−−−−−−−
その同時刻だった……
乱数「…え、
なんで……」
新宿の町に来ていた男は、二人の男女を見つけて目を見開いたのだった。
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作者名:雪ん娘☆ミ | 作成日時:2018年9月18日 18時