七十二話 女の子は怖いよ編18 ページ25
神宮寺寂雷side
寂雷「まだか……おそすぎる…!」
Aさんが火の海に突っ込んでから既に数分以上経つ。
今か今かと、野次の列の前で廃墟の入り口を眺めるが一向に戻ってくる気配がなかった。
独歩「Aさん、俺のせいで……」
横にいる独歩君は、ぎゅっと手を握りしめながら燃え盛る廃墟を見つめていた。
彼のその一言から、「死」という不穏な文字が頭によぎる。
やはりあの時、力づくでも彼女をとめて私がいけば良かったのだろう。なんて考えるのはもう遅くて意味もない。
寂雷「…大丈夫だ、彼女はきっと戻ってくる…。」
考えたくなくて、この一言で自分の焦りと不安をかき消すようにした。
廃墟の入り口は、もうずいぶん炎に包まれてしまって、とても彼女が戻ってこれそうになく。
ただはやる鼓動を感じながら、独歩君と眺めた。
寂雷「頼む……生きて帰って来てくれ……」
痛いほど願った。その刹那−−−−−−−−−
「「「……オォアアアアアアアアアアアアアーーーーーーーーーーーーーーーーーー………ッッッッッ!!!!!」」」
寂雷「ーーーーー!!」
凄まじい咆哮のようなものがキィィィィィィィンと超音波のように響き渡ると、
バンッバンッバンッ、と廃墟の窓ガラスが割れはじめたのだ。
そして、ドウッッッと自分達の立つ野次の場所にまで突風が吹き荒れた。
野次「キャァァァァな、なに今の…!耳が……」
野次「あの廃墟から、怪物みたいな声しなかったか!?」
野次「したした!でもなんか、ちょっと女性の声に聞こえたけど…」
野次がスマホカメラを構えはじめ、次々と廃墟へフラッシュが上がる。
そんな中、独歩君と私は顔を見合わせた。
寂雷「こ、これは……、」
独歩「せ、先生、これって……」
私は彼の問いかけに、力強く頷いた。
寂雷「Aさんだ……それも、裏の人格に変わった方の…」
独歩「裏の、人格…」
独歩君は、ごくり、と生唾を飲み込み、もう一度廃墟を見上げる。彼は彼女のもうひとつの人格を見たことがないからだ。
すると、五階くらいの窓からだろうか。
ゆらっ、となにかの影が覗く。
消防員「おい!!生存者が五階の窓にいるぞ!!」
窓から覗いたそれは、
ぐったりした男と女を抱えて、金の髪を爆風にびゅうっ、と流していた。
それを見たと同時に、胸一杯にはたはたと希望が広がった気がして、
寂雷「Aさん…!」
柄にもなく大きな声で名前を呼んでいた。
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作者名:雪ん娘☆ミ | 作成日時:2018年9月18日 18時