六十八話 女の子は怖いよ編14 ページ21
観音坂独歩side
一二三が、ストーカーに心中をかけられた。
ゴウゴウうるさいくらいに廃ビルが燃え盛り、パチパチと灰が飛んできた。
ああ、なんて俺はついてないんだ。
今日だって、ハゲ課長に怒られた後。
お前が死んだら……俺はどうすればいい……!
大事な友達を失いそうな焦燥にかられ、カラカラと口が渇くのに、涙はとまらなかった。
「……独歩さん。」
Aさんの声が振りかかる。しかし、それすらに顔をあげる気力はない。
と、思っていた。
「私が、行きます……!」
独歩「……」
顔をあげると、Aさんと目があった。
しばらく思考停止する。
「私が一二三さんを、必ず助けます……!!」
独歩「……
えッッッ?!」
驚く間もなく、目の前からAさんは離れ、消防車の横にあったバケツを取り出し、
頭の上でひっくり返したのだ。
バシャバシャッッとAさんは頭からわざとびしょびしょになり、ポタポタと髪から水を滴らせた。
寂雷「危険だ!!ま、待ちなさい!!Aさん!!!」
すると先生はAさんの腕を掴んだ。俺はただ、呆然とその様子を眺めていた。
「せ、先生……。」
寂雷「駄目だ、君を行かせるわけにはいかない……!!このまま行ったら君だって助からないかもしれないよ……!」
先生は、見たことない顔と声でAさんを繋ぎ止めた。
しかし、Aさんは一瞬とまどっただけで、
「先生、私、約束したんです…。」
「一二三さんを守るお手伝いするって。」
その眼差しはすぐ決意のものになった。
寂雷「…でも」
「…それに、今きっと一番怖いのは一二三さんです。
怖い女の子もいて、熱い火にあぶられそうになって……」
「だから、私行きます…。
絶対に生きて帰りますから、行かせてください…!」
寂雷「……。
Aさん……。」
先生は、苦虫を潰したような表情だった。
彼女は静かに先生の手を振り払い、野次の人の間を縫って先頭へ抜けた。
そして、消防員の隙をみて建物に突っ込んでいったのだった。
消防員「ちょっと君!!!」
消防員2「まずいぞ…!!一般人が建物に入っていったぞ!!」
消防員もそれに気づいて後を追いかけようとしたが、その瞬間にボウッと火が追い返した。
独歩「ど、どうして……」
思考がまとまらない中、俺は一つだけ気づいていた…。
走る時、彼女の唇は震えていたのだ。
怖いのは彼女の方なんだ。
なのに、そうまでして彼女は一体何を守ろうと言うのだろうか。
呆然としていた今の俺には、到底解る気はしなかった。
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作者名:雪ん娘☆ミ | 作成日時:2018年9月18日 18時