事勿れ主義【イルミ】 (ページ15)

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｢日本語…？なんで…？｣
この世界で日本語なんて見たことない。
もう一度辺りを見回すとドアがあることに気づいた。
書類を机に置いて扉に近づきドアノブを捻るがガチャりという音がするだけで開く気配はない。
あの問題を解くしかないのかもしれない。
パイプ椅子に座ると書類の他にシャーペンと消しゴムが用意されていることに気づく。
私が手に取ったプリント以外は冊子になっており、それが2冊。
上に置いてある方の冊子をパラパラ見ると日本語の羅列が書かれていた。
最近は能力で本を取り出し読むということをしなくなっていたから懐かしさが込み上げてくる。
シャーペンを持ち問題を解き進めていくとある既視感を覚える。
学校の定期テストのような、いや、定期テストじゃん。
1冊目を終わらせ、2冊目に手をつける。
中身は英語の問題だった。
この世界では英語はチラチラ見たけれど前の世界ほど普及している訳では無い。
読み方も発音記号というよりかはローマ読みばかりだった。
ちょっと単語は忘れていたけれど、まあまあ解ける。わかる。
全部の問題を解き終わり、見直しをしていたらガチャという音が耳に入る。
少し驚いてドアの方に目をやると、花柄のワインレッド色のワンピースを着た黒髪でショートカットの女性がいた。
｢驚かせちゃった？ごめんなさいね｣
切れ目をもっと細めて口角を少し上げる彼女。
キツネみたい。すごく綺麗な女の人。
彼女は微笑みながら近づいてくる。
｢終わった？｣
｢あぁ、はい｣
ゾルディック家やヒソカ以外の人と話すことが久しぶりすぎて緊張する。
｢回収していいかしら？｣
｢大丈夫ですよ｣
2冊重ねて彼女に差し出す。
｢ありがとう。じゃあ採点してくるわね｣
私から冊子を受け取る彼女。
｢よろしくお願いします｣
｢はい、お願いされました｣
彼女は受け取った冊子を胸の前で抱きしめる。
｢ではまた後で｣と彼女は言葉を残し、この部屋から出て行った。
彼女は試験管？
でもトリックタワーって刑務官のハンターが試験管で囚人を利用して(言い方に語弊があるけど)試験していた気がする。
じゃあ彼女は囚人？
狐、いや妖狐のような雰囲気の彼女を思い浮かべる。
囚人にしては品がいい気がする。
なんて考えていたら彼女が戻ってきた。