2作品目-12 〔赤井side〕 ページ38
任務の帰り、気晴らしに少し町内を回った。
道路沿いにあった駐車場に車を止め、外の空気を吸う。
マッチを取り出そうと懐を探った時、ふと視線を感じた。
目線を其方に向けると、少し離れた車の中で口を押さえ興奮して何か叫んでいる女性が目に止まる。
目線を逸らそうにも、どうにも気になってしまった。
煙草をしまい、近付いて声を掛ける。
遠目では気付かなかったが、そこに居たのは目を引く様な美しい顔立ちをした女性だった。
『あ、あの…ッ赤井さんですよね?!』
どこか愛らしい、上擦った声。
だが、彼女の容姿よりも彼女が何者か、の方に関心が向いた。
何故なら、全く見覚えの無い女性が自分を知っている理由が分からなかったからである。
『あの、握手してもらっても良いですか…?』
「構わないが…、その前に君は誰だ?」
『あ、えぇと…その…。』
彼女は答えにくそうに視線を右往左往させた。
何か疾しい事でも有るのか?
彼女の顔をジッと見つめ、訝しむ。
だが、彼女は反応に困った様子で顔を赤らめるばかりだった。
「すみません遅れ…、ッ…!」
声がする方に顔を向けると、見覚えのある眼鏡の男性が息を切らして車に駆け寄ってくる。
俺の存在を認識すると、スーツの襟元を正し、ゆっくりと此方に近付いてきた。
「ん…?君は確か降谷君の所の…。」
「風見裕也です。…お久しぶりです、赤井捜査官。」
「あぁ、風見君だったな。ところで、この女性は?」
「……守秘義務があるので、お答えできません。」
「そうか。…邪魔をした。」
何か言いたそうに口を開け、俯いて口を噤んだ彼女を横目に見送り、煙草に火を付けて、車の方へと戻った。
差し詰め、公安の協力者といった所か。
だが、何故俺を知っていたのか聞きそびれたな…。
恐らく報道か何かで見かけたんだろう。
車が目の前を通り過ぎる時、再び彼女と目が合った気がした。
煙草を燻らせて、ふー、と息を吐く。
もう会う事は無いだろうが、興味を惹かれる女性ではあったな…。
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作者名:シメ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/b78ff5dd8c1/
作成日時:2021年2月13日 23時