1作品目-6 ページ21
『なら、…そうさせてもらうね。』
口調が変わると、少し声色にも明るさが出て、
一気に親しみやすくなったように感じた。
「普段から敬語を使っているお前が言うとはな。」
ライは喉をクツクツと鳴らし、嘲笑う。
揚げ足取りばかりしてくる、…本当に嫌な奴。
バーボンは内心苛立ちながらも、平静を装った。
「人付き合いに於いて、
礼節を持って接するのは当然でしょう。
まぁ…だからこそ、
お前に対してはあまり使わないんだがな。」
「そうか、それは結構。」
澄ました態度が癪に触る。
こんな男放っておこう、と思い彼女に視線を移すと。
『……』
どういうわけか、彼女は恍惚な表情を浮かべていた。
目を輝かせて、口には笑みが隠し切れていない。
…なんなんだ、彼女は。
もしかして、ライに惚れた…?
いや、"僕ら"に対して、という方が近いような…。
一瞬で警戒心が強まった。
笑顔の意味が分からず、尋ねようと口を開く。
次に放たれた彼女の言葉に
開いた口が塞がらなくなるとも知らずに。
『仲が良いんだね。』
崩れぬ満面の笑み。
見た目がかなり地味なので、
禍々しい雰囲気を醸し出している。
揶揄っているのか…?
だとしたら…、飛んだ悪趣味だな。
ライよりは上手くやっていけると思った
数分前の自分を殴りたくなった。
一旦深呼吸をして、心を落ち着かせる。
動揺が抑えられたのを脈拍で確認してから、
作り笑いを浮かべた。
「…先程のジンの話、聞いてましたか?」
『え?あ、…うん。教育係の話だよね…?』
「僕らが不仲って事ですよ。」
『あぁ…何となく。でも、見てれば分かるよ。
お互い信頼し合ってるなぁ、_って。』
吐きそうになった。
…僕がライと信頼し合っている?
何を見てそう思ったのか、教えて欲しい所だ。
「滅多な事は言えないが、
眼科に行く事をお勧めする。」
「えぇ、全く。何をどう見ればそう思えるのか
皆目検討もつきませんね。」
『あ〜なるほど、そういう感じね。
うんうん…そういうの好きだよ。』
彼女が何を考え、何を思っているのか。
全く理解できそうに無い。
__ただ1つ言える事がある。
彼女の僕らに対する勘違いは、
恐らく出会った当初から始まっていたのだと。
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作者名:シメ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/b78ff5dd8c1/
作成日時:2021年2月13日 23時