【オリジナル】おさげちゃんと人誑しくん (ページ9)

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★第2話-1 勝敗ページ9

陽人の「勉強の妨げにならない様にする」と言う口約束が、どれ程信用出来るものか、と不安に思っていた。だが、陽人との勝負を受けた日から、彼は美月に話しかけてこなくなった。そもそも、陽人が美月に近寄る事がなくなった。

『邪魔をしないで』というのは、"一切近寄らないで"という意味では無かったんだけど…、まぁ彼の言動にもウンザリしていた所だったし、勉強に集中できる良い機会ね。

試験まで1週間弱と言った所だったので、ストレスなく勉強できると意気込む美月だったが、3日ほど経ってどうにも落ち着かなくなってしまった。

理由は分かっていた。陽人が美月に全くと言っていいほど関わって来なくなってしまったからである。美月が望んでいた状況だった筈なのに、"陽人が声を掛けて来ない"事が逆にストレスになってしまっていた。

新学期が始まってからというもの、毎日のように陽人に「おさげちゃん」と呼ばれ、勉強中にちょっかいをかけられていた。彼に悪態を吐きつつも、いつの間にか"それ"に"慣れ"てしまっていたのだと、美月は初めて実感した。と、同時に"慣れ"というのは恐ろしいものだと、思った。

何が「反射的に声を掛けちゃう」よ…嘘吐き。"話しかけない"ようにすることもできるじゃない。いつもなら、大勢の輪の中に居ても、「おさげちゃん」と挨拶してくる癖に。目が合えば、笑いかけていた癖に。今では目を合わせようとすらしない。

あんな勝負を持ちかけたのは、私と離れたいからだったの?そうだとしたら、勝負なんかせずに、ただ離れていけば良いのに。…彼の行動は、よく分からない。

悶々と考えるも答えが出る訳もなく、頭を振って目の前の問題を解く事に集中した。そうして陽人の真意を測りかねたまま、試験当日を迎えることとなった。