第1話-6 ページ8
ここまで言われてしまっては、最早、選択肢など無いも同然だ。なのにわざわざ尋ねてくるあたり、意地が悪い。勝負を"私自身が了承"してしまえば、万が一にも負けようが反論は許されない。彼のその用意周到さに恐怖を感じるが、"負けなければ"良い話である。
『いいわ、受けて立つ。だけど、テスト勉強中の妨害、カンニングなんていう馬鹿な真似、勝負自体の"取り消し"とか…絶対許さないから。それと、本当に"話しかけない"って約束守るんでしょうね?』
美月は陽人の目を見て、そう問い掛ける。陽人は美月を見つめ返して、ゆっくりと頷いた。
「それは勿論、約束するよ。勉強やテストでの不正行為はしないし、試験期間中に君の勉強の妨げになるような事もしない。正々堂々、俺とおさげちゃんの一対一の勝負だ。…だからこそ、おさげちゃんも約束破らないでね」
『私が、約束破る様な軽率な人間に見える?』
自信満々で答える美月に、陽人は笑みを深くした。
「いいや。見えないし、君が曲がった事が嫌いなのは、よく知っている。確認しただけだよ。…あぁ、それと。最後に一つ言っておくけど、"話しかけない"のは、おさげちゃんが俺に"勝ったら"の話だから。…忘れないでね」
勝てて"そうなる"から勝負を受けたのよ、という意味を込めて『そんなの分かっているわ』と告げれば、陽人は「そうだよね」と意味深げに微笑った。
「テスト、楽しみにしてるよ」
そう残して、陽人は美月に背を向けて教室を去って行った。
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作者名:シメ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/b78ff5dd8c1/
作成日時:2023年8月20日 13時