第10話-3 ページ46
「…ねぇ、何でそんな泣きそうな顔してるの」
『何でだって別に良いでしょ。…もう、あんたに関係無いんだから』
美月の言葉に、ピクリ、と彼の眉が動く。
「もう、って何?…さっきまでは俺と関係があったって事?」
『……私なんかに構ってないで、他の人の所行けば』
「どうして?俺、おさげちゃん以上に優先する人なんて居ないけど」
『このタラシ…サイテー…』
「おさげちゃんにしか言わないよ」
『そういうところ、ほんと…』
心配する素振りを見せる彼の顔を見ていると、どうしようもなく胸が掻き乱される。
彼を見たく無くて俯こうとしたが、彼の手が伸びてきて、顎を持ち上げるようにして、上を向かされた。そのまま彼の方へと引き寄せられる。
「おさげちゃん、何かあるなら全部言って。俺に悪い所があるなら直すから」
凛とした眼。綺麗な、黄褐色の瞳が真っ直ぐ此方を見ていた。顔を逸らしたくても、彼に顎を引かれている状態では、どうしようもなかった。何より彼の瞳に惹きつけられて、目が離せなかった。
『悪い、ってモノでも無いし。…"心"は言われただけじゃ直せないだろうから』
「心…?どういう意味?」
…そこまで言わせたいんだ。
ズキズキと痛む胸元を押さえながら、声を絞り出した。
『…もう好きじゃないんでしょ、私のこと』
「………は?おさげちゃん、それ本気で言ってる?」
怒気が篭った声音に、ビク、と肩を揺らす。彼の目は据わっていて、蛇に睨まれたように、立ち竦んで動けなくなってしまった。
「さっき言ったばかりだよ、君が好きだって。…そんなに俺の言葉が信じられない?」
『だって、…その、キス…して、くれなかった…から』
それを聞いた彼は、口を開けたままその場で固まっていたが、暫くしてから我に帰ったのか、言葉を返した。
「えー…っと、ちょっと待っておさげちゃん。さっきまでの君の言動を踏まえて考えさせてほしいんだけど…。その、つまり…君の事が"好き"だって証明に、俺からキスして欲しかったの?」
『うん』という言葉と共に、コクリ、と小さく頷いた。
「何でそんな考えに至ったの気になる所ではあるけど…、今にも泣き出しそうなその顔の原因は結局俺にあるみたいだね」
申し訳無さそうに眉を下げる彼は、腫れ物でも扱う様に丁寧に私の頭を撫でた。
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作者名:シメ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/b78ff5dd8c1/
作成日時:2023年8月20日 13時