【オリジナル】おさげちゃんと人誑しくん (ページ5)

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第1話-3 ページ5

そんなこんなで美月に最悪の出会いを思い起こさせた当の本人は、美月が文字を書き込んだノートをマジマジと見つめ、ややあってから呟いた。

「…英語の勉強か」

『そうよ。見て分かる事をわざわざ聞かないでくれる?…それに前も言ったけど、話しかけて来ないで』

『気が散るから』と付け足して、美月は陽人を一層鋭い目つきで見た。普段から人を寄せ付けまいとしている美月であったが、陽人に対してはより一層当たりが強くなっていた。その事を、美月自身も自覚していた。

だが、美月はそれを直す気は無かった。何故なら、何度言い聞かせても、陽人が行動を改善してこなかったからである。彼が美月を怒らせる様な事を続けるので、美月も強く当たらざるを得なくなってしまったのだった。

「ツレないなぁ、おさげちゃんは。でも、俺も前言ったよ。おさげちゃんを見かけたら声を掛けたくなっちゃうんだって。反射的なモノだからさ、許して欲しいな。それに、受験生ならまだしも、俺らまだ高校2年生だよ。そんなに必死になって勉強しなくても良いんじゃない?気張り過ぎるのも良くないって。適度に肩の力抜いていこうよ」

陽人は、美月の言動に臆する様子もなく、浅慮な意見を述べる。その態度が、美月の気持ちを更に逆撫でする。

『可も無く不可も無い順位で満足している貴方と違って、私は上を目指しているの。成績を上げる努力もしない霧原に、私の勉強への姿勢をとやかく言われる筋合いは無いわ』

苛立ちが募りに募って、棘の強い物言いに拍車が掛かる。言いたい事を言い終えて満足したからか、『ふぅ』と息が漏れた。

だが、少し気持ちがスッキリしたと思ったのも束の間、陽人の顔を見て、そんな想いは掻き消えてしまった。常人なら反発してもおかしくない、自身を貶める発言に対し、陽人は怒るでもなく微笑んでいたのである。そんな飄々とした彼の態度を目の当たりにして、美月は妙な胸騒ぎを覚えた。