【オリジナル】おさげちゃんと人誑しくん (ページ40)

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第1話-4 ページ40

荷物を詰め終えた鞄を手に取って、律儀に待っていた彼のもとに向かう。彼の下がっていた眉はいつの間にか、いつもよく見る穏やかな表情に戻っていた。スッ、と掌を上にして彼の右手が差し出される。

え、何、…手を繋ぐって事…？

おずおずと左手を差し出すと、彼は驚いた様子で、びく、と肩を振るわせた。

「えっと、おさげちゃん…積極的なのは嬉しいんだけど、そういう事されると勘違いしちゃうから、俺以外にはしないでね」

そう言うと、Aの肩から鞄を抜き去って、自分の分と共に彼の肩に引っ掛けた。

何だ、さっきの手は「荷物持つよ」って意味だったのか…。

飛んだ勘違いをした、と置いた手を引っ込めようとすると、手ごと彼の元へ引き寄せられた。

「折角おさげちゃんから手を繋いでくれたんだし、もうちょっとこのままで居させて？」

チュ、と手の甲に軽いキスが落とされる。その余韻が消えなくて、彼に手を握られているのだと、改めて認識してしまった。羞恥でカァ、と顔が赤く染まる。自分から手を離そうとしても、逆に彼の握る力が強まるばかりだった。

『…離して』

睨みを効かせると、彼はふぅ、と溜息を一つ吐いた。

「今日だけ。…今日だけは許して。…明日からは、元通りで構わないからさ」

懇願する様に潤んだ目で訴えられて、胸がチクリと痛む。普段とは違った掠れた様な声も相俟って、これ以上強気には出れなかった。

『…今日だけ、だからね』

しどろもどろになりながらそう告げると、彼は慈しむように、僅かに笑みを溢した。

「甘いなぁ、おさげちゃんは」

そう呟く声が、優しくて、甘ったるくて、癖になりそうだった。