【オリジナル】おさげちゃんと人誑しくん (ページ32)

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第3話-17 ページ32

陽人は美月の耳に手を伸ばし、彼女の耳たぶに触れた。突然触れられてビク、と肩を揺らす美月に構わず、彼は贈ったイヤリングを箱から取り出して、手ずから美月の両耳に付けると満足げに頷いた。

「うん、良かった。…やっぱり似合ってる」

顔を離して満足そうに笑う陽人に、美月は視線を泳がせる。

胸が高鳴って、鼓動がうるさい。

顔が熱い。

もはや耳まで真っ赤になっているかもしれない。

『ッお、お手洗いに行ってくる…っ』

美月は恥ずかしいやら何やらで、ベンチから勢いよく立ち上がると、逃げるようにトイレへと駆け込んだ。トイレの個室に入って、ドッドッと高鳴る鼓動を抑えようと胸に手を当てる。

『なに、これ……ッ』

一向におさまるところを知らない、むしろ意識すればするほど大きくなる心音に、美月は困惑していた。

霧原に触れられた耳が熱い。

もう触られていないはずなのに、まだ感触が残っている。

そっと、自身の耳たぶに手を伸ばす。チャリ、と先程陽人に付けて貰ったイヤリングに触れ、思わずギュッと飾りを握り締めた。

霧原から貰った箱を開けた時、とても可愛いと思った。

と、同時に、可愛すぎると思った。

自分には似合わないと思うほどに。

だが、霧原は「似合ってる」と言った。

彼が嘘を吐いたのだとしても、その言葉を嬉しいと思ってしまった自分が居たのは隠しようもない事実だった。

彼の真意は未だに分からない。

彼が嘘を吐いているのかどうかも。

だが、美月へと触れてくる手も、美月を見つめる瞳も、彼の言葉も、何気ない紳士的な行動も。

彼を知れば知るほど、心を乱されて仕方がない。

美月は俯いて、深く息を吐いた。

とにかく、心を落ち着かせなきゃ。

美月はそう自分に言い聞かせながら、一先ずの策として深呼吸を繰り返して心頭滅却を図るのだった。