第3話-14 ページ29
「俺はちょっとしたら店の外に行くから、選んで買えたら教えてよ。何か分からないで貰う方が、より喜べて良いと思うし」
陽人はそう言うと別の商品が置かれているアクセサリーの棚の方へと向かって行った。美月は、彼が離れたことは特に気にせず陽人の好きな様にさせ、陽人が別の商品を見に行っている間、ペンダントやネックレスの掛けてある壁を吟味した。
そうして数十分かけてようやく選び終えた美月は、レジで会計を済ませ、店から出た。店の前は来た時より少し人だかりが出来ていた。
辺りを見渡して、人混みの先で陽人を見つけた美月は、駆け寄ろうとして思わず足を止めた。陽人の前には女性2人組が居て、陽人に話しかけているようだった。
「あのぉ、お兄さん1人?私達とお茶しない?」
「え、めっちゃカッコいい〜。ねぇ、私と付き合おうよ」
聞こえた限り、陽人が1人でここに来たものだと勘違いして声を掛けているようだった。
「ごめんねお姉さん達。…悪いけど、大切な人を待ってるから」
「えー、こんなとこで待たせる様な人と居るより、私達と居る方が絶対良いって」
「……はは、それはどうかなぁ」
怒っている、と直感で思った。彼との学校生活と、今日半日デートしていた経験を踏まえて、美月には陽人の笑顔の“差”が少しわかる様になっていた。
美月は近付くべきか一瞬躊躇った。だが、通路のど真ん中で立ち止まっていたせいで、横から来た通行人と肩がぶつかってしまった。
『きゃ…ッ』
「……っと、すみません」
よろめいた美月の身体を、通行人の男性が受け止めた。美月は慌てて体勢を立て直しながら男性に謝罪し、頭を下げた。男性は特に気にした様子はなく軽く会釈するとそのまま歩いて行った。
「おさげちゃん!」
陽人が慌てた様子でこちらに駆け寄ってきた。瞳には心配の色が滲んでいる。チラ、と陽人の後ろを見てみれば、陽人が先程まで話していたはずの女性達は、その場に置き去りにされ、呆然とこちらを見つめていた。
「…大丈夫?怪我とかしてない?」
『え?う、うん…。肩が軽くぶつかっただけだし…』
「そっか、良かった。ここ…人が多くなっちゃったみたいだから、少し離れようか」
そう言って、手を引かれる。美月が『後ろの彼女達は良いのか』と陽人に視線を送れば、「気にしないで」とでも言う様に陽人は微笑んだ。
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作者名:シメ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/b78ff5dd8c1/
作成日時:2023年8月20日 13時