第3話-13 ページ28
『…ここだったのね』
「うん。ここの中に、俺のお気に入りの店があってね」
陽人に連れられてやってきたのは、駅前のショッピングモールだった。飲食店から衣服や雑貨に至るまで幅広い店舗が軒を連ね、その数200以上。「このショッピングモールに行けば何でも揃えられる」と言われるほどの規模を備えており、それに駅前にある利便性も相まって、平日休日ともに人で賑わっており、インドアな美月でさえも何度か訪れたことがあった。
そのショッピングモールに入り、エスカレータを上って、少し歩いた先で陽人は歩みを止めた。どうやら目的地に着いたらしい。店内を見渡してみれば、そこにはピアスやイヤリング、ブレスレットやアンクレットなど様々なアクセサリーが売っていた。
ショーケースに入っているものは本物の宝石が埋め込まれた高価な物が多いようだったが、壁に下げられたネックレスなどはシンプルなデザインで学生でも買えるような値段だった。
「形に残るものの中でも特に身に着けられるものが良くてさ。…俺に合いそうなの、おさげちゃんに選んでほしいな」
パ、と今まで繋いでいた手を離された。自由になったはずなのに、彼の掌の温かさが大きさがまだ残っている様な感覚がした。
美月は戸惑いながらも店の中に入って、陽人の好みに合いそうなものを探し始めた。校則として、ピアスやイヤリングは禁止されている。ブレスレットやアンクレットだと勉強や運動の邪魔になりそうだ、と思案しながら商品を見ていると、とある商品が目に入った。
『あ、これ……』
「…何か見つけた?」
美月の後ろから覗き込んできた陽人は、興味津々といった様子で尋ねてきた。
『このペンダント、霧原が今着けているのと色違い…だよね?』
陽人が今日身に着けているのは、銀色で十字架の部分に繊細な装飾が施されたロザリオだったが、今目の前にあるのは装飾は同じに見えるが黒色をしていた。手に取って見せると、陽人は驚いたように目を瞬かせた。
「よく気付いたね。…これ、この店で買ったんだ」
胸元に下がっている十字架に視線を落とし、それを握りしめる。そうして、陽人は顔を上げ、美月をまっすぐ見つめた。
「俺のこと、結構見てくれてるんだね」
『…別に』
「素直じゃないなぁ。…まぁ、そういうところも可愛いけど」
陽人の向ける熱い視線にたじろぎ、美月は思わず視線を逸らす。陽人は、そんな様子を見て楽しそうに笑った。
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作者名:シメ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/b78ff5dd8c1/
作成日時:2023年8月20日 13時