【オリジナル】おさげちゃんと人誑しくん (ページ22)

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第3話-7 ページ22

「ほんと、かなり久しぶりだよね?…会えなくて寂しかったんだぞ〜こっちは」

「といっても、3年ぶりぐらいですよ。有希(ゆき)さん、会わない内に冗談言うの上手くなりましたね」

「え〜、何それ酷いなぁ…本心なのにー!」

「はいはい」

陽人が軽くあしらっている様子を、美月は呆気に取られて見つめていた。2人の会話から察するに、この女性は陽人の知り合いらしい事が窺える。だが、美月には彼女が何者なのか、この店の店員ということ以外は、さっぱり分からなかった。

美月が、陽人に視線を送っていると、それに気付いたのか、陽人が美月の方を振り向いた。

「紹介が遅れてごめんね。おさげちゃん、この人はこの店のオーナーの有希さん」

「初めまして。この店の店長兼オーナーの花野有希です。陽人が呼んでくれてる様に、気軽に"有希さん"…って呼んでね」

陽人に紹介された女性は底無しの明るい笑みを浮かべながら、美月にそう言って軽く会釈した。それに釣られて、美月も会釈する。

『えっと…如月美月です。宜しくお願いします…有希、さん』

初対面の人を「さん」付けとは言え、いきなり名前で呼ぶことに抵抗感を覚えた美月は、吃りながらも、有希に促されるままに何とかそう呼んでみた。すると、有希は満足気に頷いた。

「うんうん、可愛いねぇ。美月ちゃん」

「そうなんですよ」

陽人が間髪入れずに同意するので、美月は思わず恥ずかしくなって、陽人の太腿をつねった。

「…い"っ!え…おさげちゃん、怒ってる?ごめんって。…でも、揶揄ったわけじゃないからね。本当に可愛いって思ってるよ」

陽人が不安そうな顔で美月の顔を見つめる。彼の追い打ちをかけるような甘い台詞に、顔が火照っていくのが分かった。そんな2人の様子を見ながら、有希が口を開く。

「もしかして、2人って付き合ってる?」

有希の唐突な質問に、美月は動揺した。

学校外だけど、陽人と恋人関係だとは公言したくない…。

どう返すか返答に困って、チラ、と横目で陽人を見れば、彼は美月を安心させる様に微笑んで、有希に対して言葉を返した。

「ご想像にお任せします」

含みのある言い方に、納得いかない様子の有希だったが、それ以上追求することは無かった。美月は陽人が"2人だけの秘密"を守ってくれた事に胸を撫で下ろした。だが同時に、恋人関係を明言しなかった事を残念に思う気持ちが生まれている事に気づき、驚いた。