【オリジナル】おさげちゃんと人誑しくん (ページ19)

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第3話-4 ページ19

カァ、と熱くなる頬を悟られない様に、陽人から顔を背けた。すると、繋がれていない方の彼の手が伸びてきて、手の甲の方で頬に触れてきた。

「おさげちゃんの顔、真っ赤だよ…可愛いなぁ。でも可愛すぎるから俺以外にあんまり見せないでね」

独占欲の片鱗を匂わせる様な、そんな甘い台詞に、美月は益々顔の熱が上がっていくのを感じた。この女誑しめ、と陽人に憤りを感じつつも、何処か喜んでいる自分がいることに、美月は嫌悪感を覚えた。

陽人に手を引かれたまま、寧楽駅から程近い映画館に辿り着く。日曜日の昼前という事もあってか、中々混み合っている様子だった。

「おさげちゃんは観たい映画とかある?」

陽人にそう尋ねられ、美月は首を横に振った。美月は、普段から映画を観ないので、今流行りの映画もどんなジャンルの映画がやっているのかすらも知らなかった。

『良く分からないから、霧原が選んで』

「俺が決めちゃっていいの?そっか、分かった」

陽人に連れられるまま、券売機の列に並ぶ。よく映画に来るからなのだろうか。陽人は手慣れた様子で券売機を操作し、2人分のチケットを購入し、発券されたチケットを一枚美月に手渡した。

「はい、おさげちゃん。無くさないでね」

『そんなの、分かってるわよ』

美月はそれを受け取りながら、お金を払っていないことに気付き、慌てて鞄から財布を取り出そうとした。だが、陽人がその手を制止させた。

「俺の奢りだから、気にしないで。俺の観たいヤツに付き合わせちゃう訳だし」

『でも…』

「デートなんだし、格好付けさせて。…ね?」

圧をかける様に笑顔を浮かべる彼に、美月は渋々財布を取り出すのをやめた。後で何か返そうと心に決めながら、シアタールームへと向かった。

陽人が観たいと発券した映画は、陽人曰く最近巷で流行りの恋愛映画だった。感動作とも名高いらしく、映画の開演30分前だというのに、既に多くの女性で座席がいっぱいになっていた。

男女で来ている席もチラホラ見かけたが、少数であった。発券が開演間近だった事もあってか、後ろの少し画面が見づらいであろう端の2席しか空きがなかった。そのため、自分達の座席に辿り着くまでに劇場の階段をかなり登る必要があった。

階段を登る途中、周りが女性ばかりという事もあって、陽人は注目を浴びていた。だが、彼はその視線を気にした様子も無く、いつもと変わらぬ様子で座席に腰を下ろす。美月もそれに続いた。