第3話-3 ページ18
…霧原、もう来てたんだ。
彼は、スキニーパンツと靴下、タッセルローファーを黒で揃え、白いオーバーサイズのTシャツに、ターコイズブルーと黒を基調としたタータンチェック柄のシャツを羽織っていた。ロザリオのようなペンダントが太陽の光を反射してキラリと光る。
普段学校で見慣れている姿が制服の事もあってか、私服姿の彼からは、違った印象を受けた。だが、彼の容姿を見間違える訳は無かった。
かなりの人に囲まれているあたり、結構前から待っていたのかな。
美月は、少し申し訳無く思ったが、美月とて待ち合わせ時刻より早く着いている以上、後ろめたさを感じる必要はないと自分を納得させた。それに、周りの視線を物ともせずに堂々とした姿を見ていると、少し腹立たしくも思えてくる。
彼が気付くまで少し遠くに居てやろうかと思った矢先に、ブブ、と携帯のバイブが鳴った。何事だろう、と携帯を鞄から取り出すと、1件のメッセージが届いていた。
「おさげちゃん、見っけ」
思わず画面から顔を上げると、バチ、と彼と目が合った。陽人は美月と目が合うなり嬉しそうに顔を綻ばせ、人混みを掻き分けて美月の方へと駆け寄ってきた。
「おさげちゃん、おはよう。来てくれて嬉しいよ」
陽人が美月に声をかけると、周りの女性陣から非難する様な視線が送られる。待ち合わせの相手が女だと悟った瞬間、彼女たちはがっかりした顔をして、美月の横を通り過ぎていった。
それを肌で感じながら、美月は自分の心にモヤモヤとした気持ちが湧き上がっている事に気付いた。
『…待たせて悪かったわ』
ポツリと形ばかりの謝罪を呟くと、彼はふふ、と小さく笑った。
「今来たとこだから気にしなくて良いよ」
『別に気にしてない』
「そう?…なら、行こうか」
陽人は人懐っこい笑みを見せると、美月の手を引いて歩き出した。
『な、なんで…手、握って…!』
動揺して思わず声を荒げると、陽人が悪戯な笑みを浮かべた。
「だって、俺達…"恋人"でしょ。それに折角の"デート"だしね?」
『で…っ?!そ、そんなの、聞いてない…!』
「えー、聞いてないも何も恋人同士で出かけるんだから、デート以外のなんだって言うのさ。それに、おさげちゃんも内心分かってて可愛いカッコしてくれたんでしょ?凄い似合ってるよ」
陽人に言われて、美月は自分が今日どんな服装をしているのか、どれだけ身だしなみに気を配ったかを思い出した。
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作者名:シメ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/b78ff5dd8c1/
作成日時:2023年8月20日 13時