【オリジナル】おさげちゃんと人誑しくん (ページ13)

今日:9 hit、昨日:37 hit、合計:1,127 hit

第2話-5 ページ13

「よーく思い出してみて。俺が勝利した時のご褒美として設定したのは、"おさげちゃんに俺の言う事を聞いてもらう"事だからね。"勉強させない"って話は、"俺の言う事"の1つに過ぎないんだよ」

『…………は?』

彼の言葉が、理解出来なかった。いや、理解したくなかった。だが、調子づいた彼の口は止まるところを知らない。

「つまりね、おさげちゃん。勝負に負けた君は、これから"俺の言う事"全てに従う必要があるって事」

美月は、自分の犯した最大の過ちに気付き、さぁっと血の気が引いていくのを感じた。だが、ここで引き下がる訳にもいかない。何とかして撤回させようと言葉を探すが、何一つとして出てこない。そんな様子を見て、陽人は嬉しそうに笑った。

「"テスト"自体は正直どうでも良かったんだ。"勝負の内容"…もっと言えば"勝利後の約束"に意味があったから。俺にとっては、勝てる勝負を取り付ける事自体が目的だったんだよ」

『…勝てるかどうかなんて、やってみなくちゃ分からないって言っていた癖に』

「あっはは、そうだね。おさげちゃんが全教科満点を取るような子だったら無理だったかも。…まぁ、もし俺の全力を出し切った上で君に負けたらその時はしょうがないとは思っていたし。勝てて良かったよ」

学年2位との点差を20点以上、美月との点差を90点以上も離しておいて「勝てて良かった」とはよく言ったものだと思った。今回の勝負に関しては、陽人の圧勝であり、美月の完敗であった。

美月は、もう何も言えなかった。彼は最初から、"この勝負そのもの"を餌に、美月に言うことを聞かせようとしていたのだ。彼の思い通りに事が運んでいただなんて、信じられないし信じたくなかった。

陽人は、そんな美月の心境を察したのか、ニコニコと胡散臭い笑みを浮かべた。

「さてと。じゃあ、早速本題に入っても構わないかな」

その言い方が、まるで美月を脅しているように聞こえて、悔しくて仕方なかった。だが、彼の"言う事を聞く"事を約束してしまった以上、美月は彼に逆らえなかった。美月が渋々頷けば、彼は満足そうに微笑った。

「俺と付き合ってよ、おさげちゃん」

『……え?』

彼の口から出た"付き合う"という単語に、美月は一瞬思考が止まった。いや、思考が固まったと言うのが正しかったかもしれない。