第2話-3 ページ11
良い結果を見れて心躍らせる一方で、美月の心の靄は晴れていなかった。チラリと陽人を見遣る。彼は配られた紙に視線を落としていたが、視線に気付いたのか美月の方に視線を合わせると、ふわ、と今まで見た事も無い優しい笑みを浮かべた。
ドクン、と胸が大きく鳴る。嫌な汗がツゥと背中へ流れた。警鐘のように騒ぎ立てる鼓動を鎮めるように胸を抑え、慌てて席から立ち上がり、廊下の掲示板の方へと足を向けた。
まさか。そんなはず。…ある訳ない。
掲示板の前には、いつも以上に沢山の生徒が集まっていた。美月もその人混みを掻き分ける様にして進み、自身の順位を確認した。
『如月美月…1195点、22位』
だが、自分の順位を確認したところで、激しい動悸は鎮まらない。
彼の_霧原の点数を…順位を、確認しないと。
いつもいるはずの、50番台の方に目を向けるが、彼の名は無い。そんな筈はないと、居て欲しくないと思いながら、上位30名の中から陽人の名前を探す。
『あ…』
信じられない光景が、目の前に映し出されていた。いつも上位に居る面子は余程のことがない限り大きな変動はない。だからこそ、よく見る名前が連なる中に、彼の名前があるのが異常に思えた。
『霧原陽人…1286点…順位は……1位…』
彼の笑顔の意味はそういう事だったのだと理解する。視界が眩んで、途端に足元がぐらりと揺らいだ。
「おさげちゃん、平気?」
地面に倒れそうになった美月を支えたのは、その倒れる原因を作り出した男に他ならなかった。美月は動揺を隠しきれずに陽人の手を振り払い、彼から距離を取った。
『………』
「顔色、良くないね。…あぁ、もしかして、テストの結果に驚きすぎちゃったのかな」
彼のその一言が、美月の心を益々掻き乱していく。
「おさげちゃんが見たいなら、各教科の点数も見せてあげるよ」
笑う彼の手元には、先程生徒各人に配られた紙が握られていた。確認の為に彼からその紙を受け取ろうとして、サッと手を引っ込められてしまった。何を訳のわからない意地悪を、と抗議しようとして、腕を引っ張られた。
「ここだと邪魔が入る。上で話そう」
そのまま手を取って歩き出す彼に連れられ、屋上への階段を上がっていった。ふぅ、と一息吐いて彼が踊り場に座る。やっと解放された手をさすりながら、美月は口を開いた。
『見せて』
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作者名:シメ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/b78ff5dd8c1/
作成日時:2023年8月20日 13時