純情わたがしの扱い方【赤緑】

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｢…は？どういう、意味やねん｣


ヨコの言葉が上手く飲み込めず、思わず上擦った声で聞き返す。


｢お前、最近の大倉見てて気付くことないん？｣


呆れた顔のヨコに質問で返されて、首を捻る。


“最近の大倉”って言われても、ろくに口聞いてへん俺が分かるわけない。


言われた仕事をこなして、俺に確認してもらって、昼になったら弁当を持って出て行って、帰ってきたらまた午前中と同じサイクルで。


夜は俺が帰る支度をし出すと大倉も荷物を纏めて俺が出る直前に帰って行く。


…そういえば顔もろくに見てない。


何も返事しやん俺に呆れたんか焦れたんか分からんけど、ヨコがでっかいため息を吐く。


｢…大倉最近まともに飯食ってへんと思う｣


｢え？｣


｢この前マルが遠目から声掛けても全く返事しやんくて、近寄って声掛けたら気丈には振舞ってたけど、多分無理してたって言っとった｣


俺が飯誘っても来やんしって、ヨコは心底心配してるように見える。


は？あいつ何やってんの？じゃああの弁当袋は何なん？


｢…俺は、大倉が弁当袋持ってるから丸山と食ってるんやと思ってた｣


何処と無く自分の声が震えてるようで可笑しかった。


｢マルは大抵オフィスで飯食うか、営業先で食べてるからそれは無い｣


｢…じゃあ、他の知り合いとか…｣
｢大倉の他の知り合いとか心当たりあるん？｣


畳み掛けるように俺の言うことを否定していくヨコに、俺の気持ちは焦る一方で。


確かに入社してすぐ、大学の時の先輩以外知り合いと呼べる人はおらんって大倉が言ってたのは覚えてる。


…じゃあ弁当袋を持った大倉は何処に行ってる？


少なくともそれをどこかしらで食べてるとして、せやったら何でまともに飯食ってないなんて言われるほどになってんの？


今日の大倉は？あんなに頼りない足取りやったのはなんで？


結論も出ない問いが頭の中をグルグル回っては一つ一つ疑問が増えていく。


そんな頭で出した結論は一つだけ。


｢っ…、大倉、探してくる｣


大倉は、俺が見つけ出さなあかん。


何故かそう思った。



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