あげる【 鶴蝶 】

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数日も経てばある程度は慣れてきたようで、何故か家事をやってくれることになった。

料理も洗濯も掃除も何もかも。
人間辞めかけ、かろうじて生きていたようなオレの生活はここ数日で人間らしくなっている気がする。



全く料理ができないから冷蔵庫の中身すらまともに把握していなかったが、あえて弾は抜いて入れっぱなしにしていたチャカを見つけたAが半泣きで報告してきたときは久々に腹を抱えて笑った。

別にソレでオレを撃とうとしてもなんらおかしくはないのに触らずオレに報告してきたあたり、利口な奴だと思う。
ひょろっこいド素人のガキに扱える代物じゃないし、万一オレに向けたとしても間違いなくAは梵天に消されるだろうから。






「 そうだな、初めて見るよなこんなん 」


『 こ、怖かったです 』


「 悪い悪い。触らなかったのは利口だ 」


『 ･･･触れるわけないじゃないですか 』






オレの感覚がズレてしまっているのか。
どちらにせよAは正しい判断をした。


ここ数日でAに関してわかったことは、物静かで大人しい性格だということと、甘いものが好きということ。

世間一般の女子高生らしいといえばそうなのだろう。そういう世界は長らく関わっていないが。



オレの服を着て、キッチンに立つ後ろ姿。
脳裏に浮かぶのは “ 女子高生誘拐 ” の六文字。
実際梵天が裏で動いているからそんなことにはなっていないのだろうが、やっていることはモロにソレである。

どうせ堕ちるとこまで堕ちきった結果こんなことをやっているのだし今更善人ぶるつもりもないが、ただただ巻き込まれているだけのAははやく解放してやらなければ、と思う程度に人の心は残っていたらしい。



煙草は換気扇の下かベランダで吸わないと退去時面倒ですよ、と慣れた口調で言われるものだから大人しく言いつけを守り、キッチンに立つAの横に並んで火をつけた。






「 ･･･オマエそれ何作ってんの 」


『 麻婆豆腐です 』






･･･麻婆豆腐って挽肉入ってたんだな。
思わず口に出せば、今まで何を食ってきたのかと正気を疑うような目で見られた。






『 ･･･偏ったものばかりだと早死しますよ 』


「 長生きするつもりもねーんだわ 」







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