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少しの間そのままでいれば、「帰ろっか」とどちらが言ったのか、そんな言葉が聞こえた。
巾着の紐をなんとなく持ち直すと、さっき歩いて来た道を戻っていく。
「送ってく」
「……ありがと」
小さな会話と夜なのに生暖かく感じる風だけが私達の間をすり抜けていった。
今度は夜じゃなくて、太陽が出てる時に見に行ってみようかな…
まぁ行けたらだけどと自嘲気味に心の中で呟く。
下駄だと少し歩きづらい道をゆっくりと気をつけて歩く隣を、彼は同じペースで頭の後ろで腕を組みながら歩いてくれていた。
こういう所に皆惚れるのかな、なんて。
私にはよくわからないやと思いながら、お互いに揃ってまた賑やかなあの中へと入っていった。
ーーー
ーー
ー
まだ賑わっている神社を出れば一気に空気が変わった。
いつもならこれくらい静かなのが普通なのに、今は異常にこの静けさが寂しく感じる。
「……今日はありがとう、楽しかった」
「おう、楽しめたんなら良かった」
「お互い食べたいもの食べれたし」
「……なんか、俺ら傍から見たら食い意地張ってるようにしか見えなくね?」
「……確かに」ぷっとどこからともなく笑いが零れる。
だって金魚掬いなんてやっても連れて帰れないし、ヨーヨー釣りとか射的とかこの歳でやるのは少し恥ずかしかったし。
まぁ気にしなければどうってことない理由ばっかりなんだけども。
でも、それでも充分楽しかったんだしいいかなって。結果オーライ、なんて言ったらおかしいか。
笑いがだんだん収まり始めたのと同時に、私の家が見えてくる。
これで今日も終わりかとか思いながら立ち止まって彼の方へ体を向けた。
「ここまででいいよ」
「いや、家の前まで送るよ」
「ううん、大丈夫。ありがと。」
「……家に入るまで気をつけろよ」
「そんな、小さい子供じゃあるまいし、心配しすぎだよ」
歳は増えても、私に対する関わり方は変わらない。
心配症なのもあの頃からずっと同じ。
もう昔とは違うんだってことは、私も、彼も、ちゃんとわかってはいるのにね。
お互いに別れを言い合い手を振り合うと、帰路を辿り始めた。
ドアを開けて家の中に入る時、なんとなくゆっくりと振り返れば、彼が後ろを向いて歩き始めている姿が見えて。
「ありがとう」ともう一度、彼には聞こえるはずもないお礼を言った。
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れな(プロフ) - しっぽうさぎさん» 素敵な感想ありがとうございます!とっても嬉しいお言葉ばかりで…書き手冥利に尽きます´ `* これからもまったり更新ですが最後までよろしくお願いします!高校時代はまだ公式さんから何も言われてなかったので、自由に想像しながら書けてたんですけど…焦ってます;; (2019年2月16日 9時) (レス) id: f22e3e55d7 (このIDを非表示/違反報告)
しっぽうさぎ - 読み始めた瞬間『あ、この作品好きだ。』と感じました。久々の感覚と、久々に好みな作品を見つけられて最高に嬉しいです。関係無い話ですが、私も前におそ松さんの学生ストーリーの作品を作って、あら公式と違うわとなりました。…共感です。笑 (2019年2月14日 18時) (レス) id: dc9d359d93 (このIDを非表示/違反報告)
れな(プロフ) - 来夢*゚さん» 初めまして。素敵な感想ありがとうございます!キュンとくる内容になってるか微妙だったのでそう言って貰えてとても安心してます。のんびり更新な感じではありますがどうぞ最後までお付き合いよろしくお願いします ^ ^ (2018年5月6日 6時) (レス) id: f22e3e55d7 (このIDを非表示/違反報告)
来夢*゚(プロフ) - 初めまして。学生特有の甘酸っぱい恋物語に当方毎回楽しみにしながらキュンキュンさせてもらってます(〃ω〃) これからも頑張ってくださいね。応援してます! (2018年5月5日 16時) (レス) id: 522dbc585e (このIDを非表示/違反報告)
万珠沙華(プロフ) - レスありがとうございます!! (2018年4月22日 20時) (レス) id: a8300dcf2b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:れな | 作成日時:2018年4月19日 19時