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赤いまん丸のりんご飴を食べ終わり、その後に買った焼きそばを食べている私の隣では、彼がたこ焼きを美味しそうに頬張っていた。
「……結局欲しいもの買ってるし」
「へへ、だって美味そうにこっち見てくっからさ」
「見てたのは自分でしょ?」
「まぁまぁ、んな細かいことは気にすんなって」
さっきの、あのかっこいい決め台詞のような言葉は全て嘘だったのだろうか…
でも時々気にかけて声を掛けてくれる彼の姿を見ると、やっぱり嘘ではなかったのかなとも思う。
本当、彼のことが未だにわからない。
「……あ、お水持ってくるの忘れた」
「え、あのいつものやつ?」
「そう」
「買ってこよっか?確か近くで売ってたはずだから」
喉乾いたなぁと思って、手探りで巾着の中にあるはずの水を探すも見つからなくて、リビングの机の上に置きっぱなしにしてしまったのを思い出す。
「ううん、私も一緒に…」と言えば無理するななどと言われてしまい、申し訳なくなりつつも「ごめん、お願いします。」と頼んだ。
お水かお茶どっちがいいか聞かれて、お水と答えれば彼はあそこで待っててとポツンと置かれたベンチを指さすと、そのまま走って買いに行った。
「はぁ……なにやってんだか」
ストンと座るとそんな独り言を零した。
自分の馬鹿さ加減がつくづく嫌になる。
きっとこれだけは彼にも負けないくらいバカだと自分でも言える気がした。
飲み物がないとこの時期はやっぱりキツい。
元々あまり体力のない私の体は、こまめに水分補給をしないと熱中症になって悲鳴をあげてしまう。
これは親からも、お兄ちゃんからもよく言われたこと。
なのに忘れるだなんて……
理由はそれだけじゃないからほんとこの失態は許されない。
焼きそばを食べながらため息を1つ零した。
「…………ぎゃっ!!」
「ふはっ、相変わらず女子力低い反応だねAちゃん」
頬に突然冷たいものを当てられて思わず変な声が出る。
犯人はやっぱり彼で、子供だなぁと心の中で小さく笑った。
「……いいでしょ、別に」
「うそうそ、Aちゃんは他の奴らより何十倍も女子力高ぇから。ほい、お水」
「そ……ありがとう」
またこうやって私の気持ちを上げるようなそんなことを言ってくる。
そういうことは私じゃなくて、別な人に言ってほしい。
お水を受け取る時微かに触れた彼の手は、水で濡れていて冷たかった。
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れな(プロフ) - しっぽうさぎさん» 素敵な感想ありがとうございます!とっても嬉しいお言葉ばかりで…書き手冥利に尽きます´ `* これからもまったり更新ですが最後までよろしくお願いします!高校時代はまだ公式さんから何も言われてなかったので、自由に想像しながら書けてたんですけど…焦ってます;; (2019年2月16日 9時) (レス) id: f22e3e55d7 (このIDを非表示/違反報告)
しっぽうさぎ - 読み始めた瞬間『あ、この作品好きだ。』と感じました。久々の感覚と、久々に好みな作品を見つけられて最高に嬉しいです。関係無い話ですが、私も前におそ松さんの学生ストーリーの作品を作って、あら公式と違うわとなりました。…共感です。笑 (2019年2月14日 18時) (レス) id: dc9d359d93 (このIDを非表示/違反報告)
れな(プロフ) - 来夢*゚さん» 初めまして。素敵な感想ありがとうございます!キュンとくる内容になってるか微妙だったのでそう言って貰えてとても安心してます。のんびり更新な感じではありますがどうぞ最後までお付き合いよろしくお願いします ^ ^ (2018年5月6日 6時) (レス) id: f22e3e55d7 (このIDを非表示/違反報告)
来夢*゚(プロフ) - 初めまして。学生特有の甘酸っぱい恋物語に当方毎回楽しみにしながらキュンキュンさせてもらってます(〃ω〃) これからも頑張ってくださいね。応援してます! (2018年5月5日 16時) (レス) id: 522dbc585e (このIDを非表示/違反報告)
万珠沙華(プロフ) - レスありがとうございます!! (2018年4月22日 20時) (レス) id: a8300dcf2b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:れな | 作成日時:2018年4月19日 19時