第五話 ページ7
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「あ、兄上、あの」
「何回も言わせるな。何やってんだ」
兄上は私には目もくれず、言い争いをしていた二人を交互に見やる
兄上によって掴み上げられている二人の腕はカタカタと震えていて、兄上はそれに気付いていないのかその掴む手を離さない
愛妻家であるこの人が、何故こんなにも周りが見えていないのか
普段見ることのない実の兄の姿に、私は言葉を発せずにいた
「お前ら、俺は前に言ったよな。幾ら俺の愛する嫁とは言え、俺の妹に手を出したらそれなりの事はすると、そう言ったよな」
「て、天元様、これは、ちが」
「私たちは、Aにそんな事っ!」
「じゃあ何だ」
圧が凄い
本当に周りが何も見えていない
私はそこで、震える口に喝を入れて話し出す
「あにぅ、兄上、御二人はちょっとした事で言い争いになってしまって、あ、の、それで、あの…それが段々酷くなってしまって、その、あ…私があの、上手く纏められなくて、すみませんって言うか、いや、すみません…です」
我ながら滅茶苦茶な言葉だ
正直今さっき自分で口にした言葉だと言うのに、何を言ったか全く覚えていない
恥ずかしさと同時に情けなさを覚えながらも、私は兄上の言葉を俯きながら待った
「………ったく、紛らわしい事すんなよなぁ」
兄上はそう零し、二人の腕を離した様だった
「悪いまきを、須磨。俺の早とちりで怪我させちまったな…本当に悪い、女に手上げるなんぞ男として派手になってねぇ…俺を殴れ」
「そ、そんな!元はと言えば私達が下らない口喧嘩を始めてしまったのが悪い訳であって…!」
「すみませんでした天元様ああぁあぁぁああ、うっ、ぐっうぇ、Aぢゃんも、ごめんねえぇええぇええぇぇえ!!」
泣きながら謝罪をされ慌てて手を振る
「…殴ってくれ、俺の気が済まねぇ」
そう言って頭を下げる兄上に近付き、二人は優しく…本当に優しく、兄上の両頬に手をあてた
「…これで、御勘弁を」
そう微笑みながら呟いたまきを姉上と、未だグズグズと音を鳴らしながら泣いている須磨姉上を、兄上はそれもまた優しく抱き締めた
その後お風呂掃除から帰ってきた雛鶴姉上が目を見開きながら驚いたのはまた別の話である
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Tomoka(プロフ) - 焦らしプレイだと?!グッ気になって毎日見てしまうぅぅぅぅ (2019年12月9日 23時) (レス) id: 902956a03c (このIDを非表示/違反報告)
2代目蒼桜 - 焦らしプレイなんて...嫌いじゃないわ!!! (2019年9月26日 18時) (レス) id: 3b6c9a1b80 (このIDを非表示/違反報告)
マモル(プロフ) - え、バチくそ気になるとこで「続く」だと?あぁん、、焦らすなんて、、、好きです← 続きが気になる終わり方最高。待ってる。 (2019年9月23日 23時) (レス) id: 58a48f54b9 (このIDを非表示/違反報告)
C吉(プロフ) - (´・ω・`)さん» コメントありがとうございます!!ほわほわさせんじゃねえ!!とか返したい所ですが、立場が違いましたね…ほわほわして下さって嬉しいです!!これからもほわほわして頂けるように頑張りますね!!本当にありがとうございます!! (2019年9月23日 14時) (レス) id: a20b0a3c58 (このIDを非表示/違反報告)
(´・ω・`) - ほわほわする… (2019年9月17日 20時) (レス) id: 03f6bf06e7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:C吉 | 作成日時:2019年9月16日 17時