まさかの ページ10
みのり視点
「えっ？」
まさかの形で豪炎寺修也の情報を手に入れることは叶いそうだった。
それ以前に、去年のFFスタジアムで見た彼をここで… しかも至近距離で… 見るとは思っていなかった。
今日来た時点で多少諦めていたことが叶うのは嬉しいとしか言えない。
「やっっばい……」
確かに胸を躍らせている。帝国イレブンには悪いかもしれないけど、一瞬だけ雷門中に入りたいと思った。
試合は雷門ボールで再開。去年叶わなかった木戸川対帝国が擬似的に行われているという… そういう解釈でいいのかな？
「〈デスゾーン〉！」
豪炎寺さんは帝国ゴールに向かって走っている。
「ボールは雷門ゴールなのに…？」
ボールを目で追っていると、円堂さんは
「マジか…！」
伝説と言われ続けた40年前のイナズマイレブン、それを彷彿とさせるその技は一気に流れを変えてきた。
私にも届く声で円堂さんは豪炎寺さんにボールを渡した。反応した豪炎寺さんは空高く舞い上がり、
「〈ファイアトルネード〉！」
雷門に1点が入った。
「……良いもの見れちゃった。」
と、帝国側が試合放棄。雷門に勝ちをつけて帝国イレブンは引き上げていく。
「夢継、行くぞ。」
「え、えぇ……」
まだ余韻に浸っていたいし、念願の雷門周辺の観光とかしたいし…！とは言葉に出せず、
「私は… しばらくこの辺りを歩いていますね、先に戻っていてください。」
よく分からない言葉を返してしまった。ついでに、1枚だけ取って書き連ねていた紙を抜いたバインダーを差し出す。
「そうか、分かった。」
と、バインダーを受け取り颯爽と装甲車に向かって歩き出した鬼道さんの背中を見ながら「雷門っていいなぁ」なんて言葉に出した。
2軍の選手のひとりが私のカバンを持ってきてくれたのを少し申し訳なく思いながら、雷門の町を散策している。
「商店街の方は周りきったし…… あの鉄塔の方行こっと。」
スマホに入れていた地図を見ながら、河川敷を渡って鉄塔を目指していく。
カミナリのマークがシンボルのこの町の高台にそびえ立つ鉄塔は、向かい合う夕焼けに照らされていた。
ひと昔前の情景を連想させるこの場所は、なぜか懐かしさを感じさせる。
風がひとつ吹いて、少し寒くなって
「あーーっ！！さっきの！！」
と大声を出されて、とっさに右を向いた。
「円堂、守さん！？」
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