幻が誘うは (ページ9)

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1回だけページ9

視点無し

帝国イレブンのパスで後半開始。鬼道は何かを呟いた後、

「奴を、引きずり出せ！」

と言い放った。

直後に出された技は、

「〈デスゾーン〉！」

ふと、「辛い」なんて言葉がみのりの頭の中で回った。

「これは… サッカーじゃない。」

彼女がいつも見ていた、練習していた風景とは何もかも違う。

豪炎寺修也を引きずり出すのに本気である証拠、それが今の帝国をまとう雰囲気だった。

その後も目を瞑りたくなる展開の連続。

格下相手への興味は何もなく… と言ったところだ。

目金が試合放棄をし、雷門中の生徒からも諦めの声が出始めていた。

目的を知らない帝国イレブンのひとりも「一点を取ることすらできない」とゴール前に倒れ込む円堂を煽り、流れは帝国に取られたままだった。

「まだだ…… まだ、終わってねえぞ……！」

この一声は、確かに彼らを揺るがしていた。

鬼道は目を凝らし、豪炎寺は見てもいない情景を目蓋の裏に映していた。

「夕香。……今回だけ、お兄ちゃんを許してくれないか。」

脱ぎ捨てられた10番(エース)のユニフォームを手に取り、袖を通した。

「誰だ？」
「雷門にあんな奴居たか？」

円堂は、ふと聞こえたその声に反応した。

あの河川敷で強烈なシュートを食らわせて、今までに感じたことがないくらいに胸を焦がした、あの豪炎寺修也がフィールドに向かってきている。

彼が表情を明るくさせている裏で、鬼道はニヤリと笑った。ここからが本番だ、とでも言わんばかりに。