幻が誘うは (ページ8)

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余裕と全力ページ8

みのり視点

その後は声も出ないほど、酷いプレイをしていた。これが帝国か？と思わせるほどのプレイ。

……どうしてだか、ふと昔の記憶が思い出された。

お姉ちゃんとサッカーをして、家に帰ろうってときのことが。

「……そっか、帝国には純粋さがないんだ。」

ハードな練習をこなし、“帝国学園”のブランドを掲げ、誇りを持ってプレイしている彼らは一種の呪いにかかったとも言える。

せめて私だけは、澄んだプレイができる選手であろう。

前半が終わり、ふと手を止めていた紙に目を向けた。

ひとつひとつのプレイに全力である証拠が、あの一瞬でも分かる。

しかし、それはまだ初心者、経験が少ないからのこと。がむしゃらに走ってドリブル、パスを出して、シュート。この基本動作に全ての全力が注がれているのがよくわかる。

一方、余裕をかましているこちら(帝国)とは体力面、技術面でも圧倒的な差がでてしまう。

実戦のみでしか培えないものもある。それを経験してきた・してきてないでは違いが生まれるのもおかしくない。

「……いいな、雷門のプレイ。」

そう言葉をこぼしてしまった。

寺門さんが睨んでくる。聞こえてたらしい。

ちょっと考えすぎたことを後悔しながら、顔は一切変えずに後ろを見た。

……豪炎寺修也、それらしき人物は見当たらない。けれど、ここに確かにいるんだろう。

どうやって引きずり出すか。それは向こうが試合放棄をしないことに意味があるのだろうか。