思うこと ページ5
「それで、お姉ちゃんは?」
たぶん、目が輝いていたと思う。あんまり表情には出てなかっただろうけど。
「もう少ししたら退院することになったのよ。まだしばらくはリハビリも必要だけれど、やっとみんなで一緒に暮らせるのよ。」
とっても嬉しいというか、それ以外の言葉が出ない感じ。
「ホントに！？」
「えぇ、本当よ。これからは仲良く暮らしましょうね。」
母が嘘偽りのない笑顔でそう言うもんだから。
「うん、そうだね！」
と返した。
数日後、黒の装甲車に乗せられた帝国学園のサッカー部。
試合に出るイレブンとその他部員も一気に乗せられるほど、この車は大きい。
見慣れた訳じゃないし乗り慣れた訳でもないから、やっぱり緊張する。
「.......えげつな。」
「そうか、夢継は初めてだもんな。」
「あっ、はい。」
佐久間さんに声をかけられた。接しやすいから、私としては助けてくれる存在になっている。
「まぁ、初めてだと驚くよな。オレも最初見たときはびっくりしたもんだよ。」
「やっぱり、そうですよね。」
自分の感覚は間違っていなかったみたいだ。一安心。
と、装甲車が揺れた。きっと止まったのだろう。
「佐久間、行くぞ。夢継は念の為にベンチに居てくれ。」
鬼道さんにそう言われる。
念の為なんて来るとき無いでしょ、と思いながら「分かりました」と返事をした。
イレブンの後ろに並び、源田さんから受け取ったバインダーを右脇腹に回した。
制服のロングスカートが扉の開くと同時に少し揺れた。
外の光が一瞬にして差し込む。目を開けるのに数秒の時間を要した。
改修の行なわれていない校舎、そこにレッドカーペットが敷かれており、両サイドにはイレブン以外の部員が制服で並ぶ。
あぁ、これが帝国学園のサッカー部なんだ。
王者の余裕。今、それを肌で感じていることが自分で信じられなかった。
イレブンが颯爽と装甲車を出て行く。それについて行く形で、私も足を踏み出した。
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