幻が誘うは (ページ17)

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無気力ページ17

栞視点

結局階段は登れずに、荷物を運ぶために使っていたエレベーターで自分の部屋まで上がっている。

「応接室が1階で助かったぁ」

言っても、意味はない。不慮の事故だったんだから。

3階に着いて、エレベーターのドアが開く。

平面を歩くことにようやく慣れた、ってレベルじゃ今後どうなるか分からない。

自分の部屋の前まで行って、何気なくドアを開ける。

ずっと立っているのもしんどいから、って理由だけで勉強机に封筒を置いて椅子を引いた。

腕に力を入れないとまだ座ることすら怖い。ベッドみたいに反発がないから、余計に。

封筒を開けて、ひとつひとつ書類を確認する。

高校関係のものが入ってるってことは間違いじゃない。でも、さっきの嘘はきっと見破られてる。

ひと通り机の上に紙を置いて、ひとつの書類を手に取った。

「まだ時間かかりそう」

リハビリをやったとて、しんどい事はずっとしんどいまま。

自分は悪くないけど、やっぱり家族に迷惑をかけているのは申し訳ない。

「なんだろね、この気持ちは。」

誰もいないのに、そんな事を声に出す。答えてくれないのに。

高校に関しても、いまいちパッとしなかった。

このまま王帝月ノ宮の高校に行ってもいいし、別の…通信とか、支援高校とかに行ってもきっと文句はない。

やりたいことがやれないことに変わりはないし、やりたくっても今の自分にはもう出来ないから。

家族だって、有人くんだって悠馬くんだって、それこそサッカー部のメンバーだって、みんな私のこと心配してくれて考えてくれてるのに。

「自分がいちばん無気力」、これが大っ嫌い。

「どうすればいいかな…」

入院時代が懐かしい。まだあれくらい制限されてた方が、夢を持ててたのにな。

「…これ以上考えたって意味ないか」

ふと、みのりの部屋の方から音が聞こえた。

何かの音楽みたいだけれど、私には分からない。