噛み合わない？ ページ16
みのり視点
来客用のティーポットに熱湯を淹れ終わり、ふと思う。
「あんな鬼道さん、見たことないんだけど」
記憶が曖昧なだけかもしれない。昔はもっと柔らかい雰囲気だったのかも。
けどここ最近は全く見ていない。少なくとも帝国学園中に入学してからは一度もない。
キャプテンとしての重圧か、影山総帥から色々言われているのか。どれを取ってもあり得そうだからこそ、あの雰囲気がおかしく感じる。
ティーポットの蓋を閉めて、ティーカップをふたつ。
「私の分もいるかな。いや、どうだろう…」
もう一つ、おぼんに乗せようとして諦めた。いるようであれば後で取りに来たらいい話だ。
結局自分は誘われたけど、めんどくさくて辞退。
もったいな〜い、とお姉ちゃんに言われたけれど、ふたりで紅茶を嗜む機会なんていくらでもあるから大丈夫。
しばらく応接室で2人の会話を聞き流していると、インターホンのチャイムが鳴った。
「私、出てくる」
そうふたりに言い残して応接室を出た。
玄関を開けると、そこには見覚えのある人がいた。
名前は確か、ノサカユウマだ。
「どうも」
彼はそう会釈をしてくる。
私も会釈を返す。
「どうしてここまで？」
「あぁ、これを栞さんに渡したくて」
と制カバンの中から出してきたのはひとつの封筒。
「なるほど。渡しておきますね」
「はい、お願いします。それではこれで」
軽く例をして、彼はどこかへ去っていった。
「……不思議な人」
柔らかい雰囲気に慣れなさすぎ、かもしれない。
応接室に戻る。ノックは忘れずに…ね。
「お姉ちゃん、これ、ノサカくんから」
「え？あ、ありがとう」
なんの書類か分かっていないらしい。
「じゃあ、俺はここで」
「あ、分かった。今日はありがとうね！」
「いえいえ、こちらこそ。」
そう言って鬼道さんは応接室を出る。
お見送りを終え、応接室に戻る。
一瞬、お姉ちゃんが驚いた顔をしていたのを見たような気がする。
「お見送りありがとう、みのり」
「どういたしまして。ところで、その書類は？」
「あぁ、進路関係のやつだよ。高校観に行けないから、資料を集めたりしてて」
絶対、そんな顔じゃなかったけど。
「そっか」
私はそう返事した。
私の中で、何かが狂い始めたのは分かる。でも…
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