幻が誘うは (ページ12)

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よくあることページ12

みのり視点

家の近くまで行くと、車椅子に座っているお姉ちゃんと見知らぬ人がいた。王帝月ノ宮の人だとは、制服で分かるけれど。

灰がかった赤色の髪。きっと男子だ。……見覚えなんてひとつもない。

声をかけないのもなんだけど、ここで見てるだけなのも少しもどかしい。

ふと、赤髪の男子がこちらを向いた。数秒、目が合う。

あと数メートルで家に着くのに、動けなくなった。

こちらからは会釈しかできなかった。そして彼は、お姉ちゃんと何かを話した後、距離を少し縮めに来た。

「初めまして。夢継みのりさん、ですよね？」

私は、困惑しつつもちゃんと頷いた。

「野坂悠馬と申します。これからよろしくお願いします。」

と、右手を差し出してきた。私の利き手、左なんだけど…

「こちらこそ、よろしくお願いします。」

とこちらも右手を出した。

「……ふふ」

久しぶりに聞こえた声。

「ちょっと、笑わないでよ。せっかく、これから仲良くしましょうね、って所なのに…。」

思わずそう返してしまった。

「いや、なんか2人がこうやって出会ってくれたのが嬉しくってさ……」

と、満足げに笑っている。

「お姉ちゃん……」

「栞さん、みのりさんのことが大好きですもんね。」

妹心ながらにそれはつくづく感じてたけど、やっぱりそうか。

などと、そんな他愛ない話をしていた。まぁ、よくある話と言えばそうなる。

野坂さんが帰ったのち、車椅子でも通れるようにと設置したスロープを登ってお姉ちゃんは家の中に入った。

……あれ、なんか、見てて辛い。どうして？