56.冷たい夜｡紅は雨空から降ってきた｡ ページ17
あの男と関わるようになってそろそろもう1年｡
季節はもう秋の終わり｡間もなく冷たい冬を迎える｡心地よい程度の寒さが､最近は肌寒く感じてきた｡それに今日は冷たい雨が降り注いでいて余計に寒く感じる｡
夜になると､更に寒さが肌を刺す｡寒さに弱い私はさっさと布団の中に潜り込んで雨の音を耳に入れながらうとうとしていた｡だけど眠れない｡
あの男の声を最後に聞いたのはもうずいぶんと前のことだ｡そう感じる｡｢いつでもおいで｣と言ったものの､もうあの電話をした日から何ヶ月たったのだろうか｡
待つつもりは､ない｡
だってアイツは気まぐれな鳥｡それを私は1番よくわかってるつもりだから｡
それにエンデヴァーさんによると､最近あの男は
チームアップを組めないほどに多忙らしい｡
身体は､大丈夫だろうか｡無理はしてないかな｡
いや､絶対無理ばかりしてる｡
アイツ､休むのへったくそだからなぁ──
ザー……ドサッ！ガサガサガサッ！
不意に雨の音に紛れて､木の葉が大きく擦れ､枝の揺れる音が聴こえて私は飛び起きる｡
私の部屋は角部屋｡そして壁の向こうの外には大きな木が一本生えている｡そこから､聴こえた｡
風に吹かれて鳴る音にしては……重い｡
まるで､空から何か─────
墜ちて､きたような｡
そこまで思い至って､私は電気をつけるのも､部屋の鍵をかけるのも､靴を履くのも忘れて｡
部屋から飛び出すと雨に濡れるのも構わず､裸足で階段を降りて､音の聴こえた方へと駆けた｡
｢はっ､はぁっ…………っ！！｣
息を切らしながら､たどりついたそこには｡
力無く､倒れていた｡
いつもよりも幾分も小さい紅の翼に､
傷だらけの､泥だらけ｡
脇腹からは水で薄くなった血を垂れ流し､
ずぶ濡れになった───紅い鳥｡
暗闇の中でも､くっきりと見える｡その姿
私は駆けていた足を更に速めて死んだように動かない彼に近づくと､着ていたシャツを脱ぐ｡
そして彼の身体をまさぐり､傷口を探し当てるとそこにTシャツを押し当てて､止血をはかる｡
｢………意識が､ない｡低体温症か｣
脇腹の傷はそこまで酷くない｡ただ､彼の頬に触れると痛いほど冷たかった｡
このままじゃ､確実に凍死する｡
私は完全に意識のない彼の両腕を私の首の前に回させると､無理やり背負うような体勢にさせる｡
そうして､半ば引き摺るように部屋へと運んだ｡
57.満ちる夜→←55.君がくれるモノを､どうしたら､君に返せるかな｡
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そら(プロフ) - 昨日今日で一気見しました！叫びそうなほど良い作品うぃありがとうございます！！！お疲れ様でした (2020年7月28日 19時) (
レス) id: 8efb03cbb1 (このIDを非表示/違反報告)
ハイイロ(プロフ) - 零さん» コメントありがとうございます！そして今作品を最後までお読み頂き本当にありがとうございます｡Another story編作らせて頂きました！ぜひともそちらの作品もお楽しみ頂けたら嬉しいです！ (2019年9月15日 12時) (レス) id: 87fa6c3c8e (このIDを非表示/違反報告)
零(プロフ) - お疲れ様でした。とてもよい作品で、私が1番好きな作品でした。よければアナザーストーリーで2人のその後みたいなのが見たいです！お待ちしてます。 (2019年9月11日 17時) (レス) id: 96c851f2fd (このIDを非表示/違反報告)
ハイイロ(プロフ) - 刹鬼さん» コメントありがとうございます！そして今作品を最後まで読んで頂き､本当にありがとうございます｡最後にそう言って頂けてとても嬉しいです！ (2019年9月10日 21時) (レス) id: 87fa6c3c8e (このIDを非表示/違反報告)
刹鬼(プロフ) - 初コメ失礼いたします。そして、完結おめでとう御座います！読んでいると心がとても温かくなる最高の作品でした。お疲れ様です (2019年9月10日 19時) (携帯から) (レス) id: 363b2bec95 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ハイイロ | 作成日時：2019年5月1日 0時
