プロローグ4 ページ4
「……へぇ」
どうにも先程から、私の行動は意外やら有り得ないやらと思われてしまっているらしい。
珍しい天人がいる。
白夜叉の考えていることは、きっとそれだ。
……敵に対して情けをかけていると思われただろうか。
逆に、敵ながら見事な志だと思われただろうか。
どちらにせよ、的外れであることに変わりはないが。
答えは……もっと単純で、汚い。
「そんなことしてると、いつか全身包帯だらけになんぞ」
「?」
予想外の言葉に、数秒意味が分からず首を傾げてしまった。
包帯……? 私は治癒出来るというのに、何故そんなことを心配するのだろうか。
そもそも何故包帯……?
考えてはっとする。
……というより、これが当たり前のことであるうえに、最後に指摘されたのが随分昔だった為忘れていた。
「見えてるのか? それ」
白夜叉が自身の目の下を軽くとんとんと叩く。
つられて私も自分の目元に手をやれば、大きな結び目に触れた。
「この目からは何も。……私の種族は超音波での視認が可能なので」
鼻から上を覆う包帯。
自分の目で周りを見ることを諦めた証拠。
だが、そんな私にも有難い能力が備わっており、それが超音波であった。
元々目があまり良くない種族である為、その代理として発達したものだ。
多少本来の見方とは違えど、姿形はほぼはっきり見えている為、大変有難く使わせてもらっている。
……そんな説明を掻い摘んですれば、「そうかい」などと興味のなさそうな返事をし、顔色一つ変えずまた満月へ目をやる白夜叉。
そこからはお互い口を開くことなく、白夜叉は上を、私は下を向いて時間の流れに一度身を委ねた。
……それにしても、白夜叉にとって私は傷の治療をしたとはいえ、敵であるはず。
少し気を抜きすぎではないかと、先程までの会話を思い返し、一つふと聞きたいことが頭に浮かんだ。
「白夜叉。貴方にとって刀とは……ただ敵を斬る為の道具ですか?」
「…………」
視線だけをこちらへ向ける白夜叉。
その肩に立てかけられていた刀が、カチャリと音を立てた。
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作者名:簪夜叉 | 作成日時:2021年1月6日 0時