紅桜篇ー第十四話ー ページ20
「お前もそいつのおかげで紅桜から護られてた訳かい。思い出は大切にするもんだねェ」
クク……と笑う高杉。
桂もその真ん前に立ち……そしてお互い当然のように剣を握っており。
ーー敵対。
分かってはいたが、こうして二人が睨み合っているのを見て、その一端を突きつけられた。
かつては共に背中を預け合い、戦っていた筈だというのに……。
最後に出会った時とは百八十度違うその関係は、まるで私が何も出来なかったことを責められているようにも思えて、つい視線を下に向けてしまう。
あの時、何もしなかった……私に。
「いや……貴様の無能な部下のおかげさ」
煽るように返した桂が、岡田似蔵に斬られた時のことを話す。
曰く、斬ったのはいいが死体の確認もせず髪だけ切って行ったらしい。
桂が斬られ、それを知った白夜叉が本人を捜索する途中で岡田似蔵と遭遇する。
私はこの状況の発端をそう考えていたのだが、あながち間違いではなさそうだ。
「逃げ回るだけじゃなく死んだフリまで上手くなったらしい」
打ち返すように煽った高杉が、ここへ来たのは復讐の為かと問う。
岡田似蔵を仕向けたのが高杉自身だと思ったからかと。
しかし当然のように、桂は高杉の差し金だろうがそうでなかろうが関係ないと首を横に振り。
二人の会話を聞いて、紅桜という存在を穏健派に知られて良いことなどあるのだろうかと、ふと疑問に思った。
紅桜がもしここら一帯を破壊する為の兵器であれば、本来隠密に動く筈。
……つまり、何らかの理由で岡田似蔵が独断で動いた可能性があるということか。
桂が関係ないと言った以上、私がそれを聞ける術などないのだが。
「……だが、お前のやろうとしていること。黙って見過ごす訳にもいくまい」
「…………」
ーーそろそろか。
そう思ったと同時に、桂と高杉の間を砲弾が通り過ぎ、奥の建物に直撃した。
「なっ……!?」
鬼兵隊の人間達が驚いて、次々に破壊される船達を見つめる中、そっと私は桂と顔を見合わせる。
当然、作戦が成功した……という確認であり。
直撃していっているのはしっかりと見たし、あれだけの炎と煙。
まずその場にあった物は、灰になっている筈だ。
「貴様の野望。悪いが海に消えてもらおう」
桂の言葉のすぐ後には、紅桜の破壊に慌てる人間達の声が聞こえて来た。
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作者名:簪夜叉 | 作成日時:2021年1月6日 0時