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紅桜篇ー第十二話ー ページ18

この二人は、白夜叉の仲間。
そしてお互いがお互いを大切に思っている。
それは昨日今日の出来事を見ればすぐに分かった。

……であれば、白夜叉の状況など簡単には言えないだろう。
一命を取り留めたとはいえ、体を貫かれているのだから。

しかし隠すのも困難……か。
矢張り治療はするべきであった。

反省したところで、志村新八の意図も汲み取らず、私が白夜叉の容態を言う訳にもいかないが、どうしてもそう思ってしまう。

「神楽ちゃん……」

今までの行動に少しばかり後悔していれば、決心がついたのか志村新八が口を開く。

……と、同時に。

「!」

何度も聞いた轟音が一際大きく聞こえた。
……かと思えば、その場で走っていた全員が、軽く宙に浮いたのがなんとなく分かり。
どうやらまたも弾丸がこちらへヒットしたらしい。

更に、衝撃によって志村新八の腕から神楽が離れたようで……。

「神楽ちゃん!」

劈くようなその声に弾かれ、船から放り投げられる神楽を反射的に掴んだ。
神楽単体ならまだしも、余計な荷物を背中に背負っている為少々重い。

隣を見れば、志村新八も必死に神楽の手を掴んでおり。

「新八……」

心配そうに名を呼ぶ神楽。
それを一生懸命引っ張り上げようとする姿を見て、私も腕に力を入れた。

これくらいなら、引き上げることは容易い。

……そう思っていると、突然神楽の体が軽くなり、そのまま一気に持ち上げられ、無事船へ引き戻すことに成功する。

床に寝そべるようにして、志村新八と二人驚いた顔をしている神楽。
そしてそれは、私も同じであり。


「…………」

助けてくれた三人目に気付かないとは。
余程この二人を助けることに集中していたらしい。

「エリザベス! こんな所まで来てくれたんだね!」

志村新八が三人目の正体を呼んでくれたところで、私もそちらを向く。

そこには、つい最近会ったばかりのペンギンが立っており。

ペンギンの格好は、桂小太郎の仲間を意識してのものだとようやく理解出来た。
となると、あの時志村新八と共に居たあれが……。

「…………」

目の前のペンギンを見て、近くをうろちょろとしている船達を見て、迫る者達を見る。

どうやら早速、避けたかった事態が起こったようだ。

私はここから、慎重に行動を取らなければいけない。
誰の味方にもなってしまわないように。
あくまでも、『三人の師の味方』になる為に。

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作者名:簪夜叉 | 作成日時:2021年1月6日 0時

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