斬り鬼 (ページ15)

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紅桜篇ｰ第九話ｰページ15

｢……それでは、予定通りに｣

ぺたぺたと扉を抜けていく姿を見送り、私もフードを深く被り直す。
あのペンギンと即席の計画を練り、下準備を終わらせた頃には既に太陽が爛々と照りつけている時間帯で。

陽の当たる時間は動きたくないのだが、今ばかりは仕方がない。

私も再度あの船へ飛び込むべくその場を後にした。

外へ身を投げれば、日光は当たらない代わりに容赦なく来る蒸し暑さ。
更に船の周りを警護する敵大勢。
……暑苦しい。

相手の動きを見つつ、額の汗を拭うより先に急いで影を探しながら船へと向かう。
この黒マント……完全に日光を遮断してくれるのはいいのだが、いかんせん地面から反射される光はあまり防げない為、とにかく陽のあたる場所だけは避けて通らなければならない。

その上誰にも気付かれないように動かなければいけないとは。

｢……？｣

もっと良いものはないのかと、半ば諦めながら船へ走っていれば、途中見覚えのある人物を見つけた。

細暗い道で、私と同じように周りを警戒しているメガネの少年。
間違いなく、昨日白夜叉と共に居た少年……志村新八だ。

そういえば、どうやら船員から盗み聞いた怪力少女は彼と白夜叉の仲間らしく、先にあの船へ潜入し捕まったとのことで。

白夜叉のあの怪我を見るに、無理をさせず彼一人が来た……といったところか。

あの時は近付こうものなら、手を掴まれそうだと危険視したから正直治療を躊躇ったが……今後の状況を考えるに、気絶を視野に入れてでも治すべきだったかもしれない。

白夜叉が仲間思いなのは、なんとなく私にも分かったから。

とにかく、あのペンギンから貰った情報が早速役に立ってくれて良かった。
怪力少女救出の為に、私も道を開かなければ。

周りへの警戒を強める為に、多少余裕を持って走ってはいたが、助けるものが増えた以上そうは言ってられない。

少しばかり危険な橋なら迷わずに進んでいれば、途中でおかしなことに気付いた。

敵だと認識していたここ一帯の中に、おかしな気配をさせる者達がいる。
本来ここにいるのは鬼兵隊の人間や、商い人だろうが……明らかにそれを狙う殺気。

更にまとまったり散り散りになっていたりと、異質な存在達ではあるが、決まってその腰には刀が刺さっており……。

｢……！｣

何を起こす気なのだろうかと思った途端、近くから轟音が響き渡った。