赤と黒の糸 ページ13
〜過去〜
昔々、とある双子の片割れはこの世のものではない異物な妖に恋をしました。
その片割れは、意識していない中で愛に飢えていました。その事実は周りの人間、そして本人も気づいていませんでした。少女にとっての一番欲しいものは親からの愛。しかし、もう一人の片割れは親を嫌い、また親達も双子の事を嫌っていました。叶わない願いだと、少女は幼いながら勘付いてしまいました。そこに現れたのが、とある妖。
「あなた、だぁれ?」
「僕は、ーーーー」
妖の名前は、当時の少女は聞き取ることができませんでした。でもそんな妖に惹かれ、毎日妖の元へ行き、一緒に居るにつれ少女にとって特別な存在となっていきました。その事に、妖も気づいていました。とうとう、妖と少女はとある約束を結んでしまいます。
「深雨。君が大きくなったら、僕は君を迎えに来よう」
「ほんと!?」
「あぁ。どうか、僕の隣に永遠にいて欲しい」
「ぼくも、隣にいたいっ!約束ね!」
「約束だよ」
2人は人間と妖の間では禁忌とされている、婚姻の約束をしてしまったのです。それも、指切りまでして。
ですが、少女の記憶は曖昧なものです。生まれて程なくして、片割れの力により前世の記憶を封印されてきました。そのためか、この頃の少女は大人になるにつれ小さい頃の記憶を留めて置くことが出来なくなってしまいました。しかし、妖を好いていることは忘れていません。僅かに残っている思い出を糧に成長してきたのです。
「もうすぐ、会いに行くよ」
少女、椛深雨が成長して大人になったことを妖は感じ取っています。そのため、機会をずっと伺っているのです。
深雨の兄である時雨により、深雨は妖との距離を取ることとなりました。それは、時雨が妖の住処であった祠に封印を施し、住めなくしたためです。
妖は自身の力を使い、とある場所に今は住み着いています。そこからいつも、深雨のことを見守っているのです。
「2人だけの世界を作ろう、深雨」
妖の魔の手が、いつ深雨に伸びてくるのかは、、、妖のみ知ること。
妖の目には、深雨の笑顔が映し出されています。
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作者名:犬塚みかこ | 作成日時:2023年1月9日 20時