過去 ページ31
パワー「ウヌは変わった匂いがする。」
貴「どんな匂い？」
夜道、街灯が薄暗く夜道を照らしていた。
彼女の髪が街灯に照らされて、絹糸のような髪から見えたシマシマの目が私にはとても悪魔なんて恐ろしいものには見えないほど綺麗に映っていた。
彼女を救ってマキマさんを殺すのは難しそうだな。
パワー「甘い匂いじゃ、今まで見てきた人間の中で一番美味そうじゃな。」
貴「ふふっ、それは光栄だな。」
パワー「食いたいとは思わんがな、ウヌの背後には物騒なものがおる。」
私はふと自分の後ろを見た。
けれど、私に見えたのはさっきまで歩いてきた道とそれを照らす街灯だけだった。先輩と歩いた夜道は怖かったな。悪魔を殺した帰り道はいつも泣いてたから。
その時はいつも先輩が私の頭を撫でてくれた。
貴「私は多分もうすぐ死ぬ。私が死んだら、その時はパワーちゃんがデンジ君を守ってね。そしたら……私はきっと大丈夫だから。」
パワー「そうか、人間は脆いな。すぐに死ぬ。」
貴「それでいいんだよ、きっと君も分かるようになる。」
パワーちゃんはいつものように興味のなさそうな顔をしていた。
背中で寝ている早川先輩の規則正しい寝息が聞こえてきた。それだけが、私の鼓動を正しく動かしてくれていた。私は前世で"肺がん"で死んだ。死んだ時は誰も来てくれなかった。それは家族が助かる事のない私を見るのが辛くなったからだ。
病室にいるのはいつも私と看護師さんだけ。
それ以外で人が尋ねてくることは無い。
『Aさん、お加減いかがですか。』
『大丈夫です……ありがとうございます。』
起き上がるのも辛い時が多かった。
今の身体は前世とは違ってずっと元気で動ける。それでも毎回毎回死にそうになってるけど。それでも窓から見える空と季節の移ろいだけが楽しみだったあの時よりも今の必死な毎日の方がずっと楽しい。
先輩に出逢えた事は私にとってこれ以上ない幸せだった。
だから、私はいつ死んだって後悔なんてないんだと思う。
貴「私が死ぬ時はきっと何も残らないだろうな。」
パワー「残念じゃな、ウヌの血は飲めぬのか。」
そう言うパワーちゃんは心底純粋な顔をしていた。
悪魔なんてあまり好きじゃないけど、デンジ君をバディだと言って嬉しそうに彼を助ける本の中の彼女が私はとても好きだった。
そんな事を考えながら早川先輩を家のベットまで運んだ。
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楸(プロフ) - ひなたさん» 分析能力が高すぎなコメントありがとうございます！そう言っていただけると本当に嬉しいです。この作品は少し難しく執筆が難航していたので語彙力豊富な感想でとても励みになりました。これからも頑張ります！！ (2023年3月30日 11時) (
レス) id: 22f489ff48 (このIDを非表示/違反報告)
ひなた(プロフ) - すごい…語彙力がなくなるぐらい凄かったです…。綺麗でとても難しい感情もあるのに全体的なまとまりがあって、かつ、主人公ちゃんの物語を上手くはめ込んでいて、読んで行きながらパズルが完成していくかのような満足感が半端なかったです…。めっちゃ応援してます！！ (2023年3月29日 2時) (レス) @page35 id: 44a03850b3 (このIDを非表示/違反報告)
楸(プロフ) - ？？？さん» すいません、涙かっさらってしまいました。涙は罪の悪魔が美味しく食べましたのでご安心を。これからもひっそりと更新頑張ります。 (2023年3月15日 0時) (レス) id: 94f21122e4 (このIDを非表示/違反報告)
楸(プロフ) - ハルヒさん» もうほんとかっこいいですよね、これからも更新頑張ります。応援ありがとうございます！ (2023年3月15日 0時) (レス) id: 94f21122e4 (このIDを非表示/違反報告)
楸(プロフ) - 海獣さん» かなりわかりみ深いです。自分でも書いていて、えぇめっちゃ好ことか思ってます。見てくれてありがとうございます、更新頑張ります！ (2023年3月15日 0時) (レス) id: 94f21122e4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：楸 | 作成日時：2022年12月8日 16時
